長瀬富郎

長瀬富郎：花王の創業者、その生涯と功績

長瀬富郎（ながせ とみろう）は、文久3年（1863年）に生まれ、明治44年（1911年）に48歳で没した実業家であり、花王の創業者として知られています。彼の生涯は、日本の産業史における重要な足跡を残しました。

生い立ちと挫折、そして起業

長瀬富郎は、美濃国恵那郡福岡村（現在の岐阜県中津川市福岡）で造り酒屋の息子として生を受けました。12歳で奉公に出され、その後、23歳で上京。しかし、米相場での失敗により無一文となります。この挫折から「堅実に生きる」ことを誓い、日本橋馬喰町の小物問屋で経営を任されるまでに成長。1887年、23歳で独立し、「長瀬商店」（後の花王）を創業しました。

国産石鹸への情熱

長瀬商店は洋小物を扱う問屋・小売店であり、その中に石鹸がありました。当時の国産石鹸の品質に不満を抱いた長瀬は、自社での石鹸製造を決意。石鹸職人であった村田亀太郎を誘い、二人三脚で石鹸製造に取り組みます。

花王石鹸の誕生と成功

1890年、長瀬は満足できる品質の石鹸製造に成功。「香王石鹸」として商標登録まで行いましたが、発売直前に「花王石鹸」に名称を変更。1個12銭、箱入り（3個入り）35銭で販売されました。

1902年には向島に工場を完成させ、石鹸のほか、香水、歯磨き粉、ロウソクの製造にも乗り出します。1904年のセントルイス万国博覧会で花王石鹸が名誉銀牌を受賞、1910年のシアトル万国博覧会では金牌を獲得し、品質の高さが世界的に認められました。

病との闘いと遺志

1909年、長瀬は結核に倒れ、療養生活を送ることになります。1911年、彼は亡くなる直前に長瀬商店を合資会社に改組する手続きを行い、その年の10月に48歳で死去しました。彼の遺志は、二人の弟、祐三郎と常一によって受け継がれました。彼らは二代目長瀬富郎を名乗り、長瀬商店をさらに発展させていきました。

花王株式会社へ

戦後、長瀬商店は花王石鹸を経て、1985年に花王株式会社へと社名を変更。現在では、世界的な日用品メーカーとして知られています。

長瀬富郎の生涯は、日本の産業史におけるパイオニア精神と品質へのこだわりを象徴しています。彼の功績は、今もなお花王株式会社の企業文化として受け継がれています。

マンガふるさとの偉人「中津川に生まれ良質な石鹸を広めた花王の創業者 長瀬富郎」

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