恵那郡

恵那郡（えなぐん）

概要

恵那郡は、かつて美濃国に存在した郡です。現在の岐阜県南東部に位置し、恵那市、中津川市、瑞浪市の一部、そして愛知県豊田市の一部にまたがる地域を管轄していました。郡域は歴史の中で大きく変動し、特に古代から中世にかけては、現在の長野県木曽[[郡]]全域を含む広大な範囲を領有していました。

郡域の変遷

発足時

1879年（明治12年）に行政区画として発足した当初の郡域は、以下の地域を含んでいました。

恵那市の大半（飯地町、笠置町河合を除く）
中津川市の大半（山口、馬籠、神坂を除く）
瑞浪市の一部（陶町）
愛知県豊田市の一部（須渕町、浅谷町、三分山町、上切町、下切町、上中町、下中町、島崎町、一色町）

古代

701年（大宝元年）の大宝律令制定時には、現在の長野県木曽[[郡]]全域も恵那郡に含まれており、美濃国内で最大の面積を誇る郡でした。ただし、以下は当時含まれていませんでした。

中津川市加子母の一部（小郷、小和知）
恵那市中野方町と笠置町の一部（河合、姫栗、毛呂窪）
愛知県豊田市の一部（上切町、下切町、上中町、下中町、島崎町、三分山町、一色町）

中世

鎌倉時代初期まで、中津川市加子母の小郷・小和知は、飛騨国を経て益田[[郡]]に属していました。16世紀初頭まで、野原村は三河国加茂[[郡]]の一部でしたが、小原氏が明知遠山氏に嫁ぐ際に化粧料として恵那郡に割譲されました。

近世

中野方村は、太閤検地時には加茂[[郡]]に属していましたが、江戸時代中期に恵那郡に編入されました。また、加茂[[郡]]の河合村が、姫栗村・毛呂窪村と合併し恵那郡笠置村となりました。飯地村は、昭和23年に加茂[[郡]]から恵那郡へ所属が変更されました。

恵那の語源

恵那山の名は、伊弉冉命が天照大神を生んだ際の胞衣（えな＝へその緒）を納めた地とされ、胞衣（えな）から恵奈、そして恵那へと変化したと伝えられています。

郡名の変遷

905年（延喜5年）の延喜式には「恵奈郡」と記載されており、平安時代中期の和名類聚抄、拾芥抄にも「恵奈」と記されています。和名類聚抄では、恵奈郡六郷として淡気（たむけ）・安岐（あぎ）・繪上（えなのかみ）・繪下（えなのしも）・坂本（さかもと）・竹折（たけおり）が挙げられています。しかし、江戸時代には「恵奈郡」と「恵那郡」の表記が混在し、明治になって「恵那郡」に統一されました。

木曽との関係

古代、木曽谷は美濃国恵那郡に属していましたが、後に信濃国との間で所属が争われました。朝廷の裁定により一時美濃国に確定しましたが、平安時代末期には「木曽は信濃」という認識が広まりました。最終的には、1491年から1515年の間に信濃国に移管されたと考えられています。ただし、木曽川より西側は、江戸時代後期まで美濃国恵那郡とされていました。

郡内の郷

和名類聚抄には、恵那郡の六郷として以下の郷が記述されています。

坂本郷：現在の中津川市坂本周辺
繪上郷：現在の長野県木曽[[郡]]
繪下郷：現在の中津川市の中津川恵下周辺
竹折郷：現在の恵那市武並町竹折周辺
安岐郷：現在の中津川市阿木周辺
淡氣郷（手向郷）：現在の恵那市山岡町の上手向・下手向を中心に、明智町、上下村(上矢作町)、佐々良木(三郷町)、瑞浪市陶町など

郡司がいた郡家郷については記述がありませんが、恵那市の大井町・長島町あたりと推測されています。

式内社

『美濃国神名帳』によると、恵那郡には以下の式内社と帳内社、国史見在社がありました。

式内社：清坂明神、中津川明神、恵奈明神
帳内社：加上明神、阿氣明神、長窪明神、鴈栖明神
国史見在社：長田神

荘園

平安時代には、木曽川以南が遠山荘、中津川市蛭川の和田川以西と恵那市中野方町、笠置町、飯地、加茂[[郡]]東部にかけては蘇原荘、木曽[[郡]]南部は小木曾荘、木曽[[郡]]北部は大吉祖荘に属していました。

太閤検地

太閤検地の結果、恵那郡は34,3102斗6升5合とされました。

江戸時代以降

江戸時代には、恵那郡の北部は尾張[[藩]]領となり、一部は旗本領や入相支配地となりました。姫栗村と毛呂窪村は、正保年間に加茂[[郡]]から恵那郡に編入されました。

沿革

町村制施行以前

明治初期、恵那郡には81の村が存在し、尾張[[藩]]の木曽衆の領地が含まれていました。明治4年の廃[[藩置県]]により、岩村県、名古屋県、苗木県を経て、全域が岐阜県の管轄となりました。

大区小区制

明治5年、大区小区制が施行され、恵那郡は岐阜県第十二大区とされました。郡内は11の小区に分けられました。

自治体の変遷

明治5年から明治12年にかけて、村の合併が進み、明治12年に恵那郡が行政区画として発足しました。明治22年の町村制施行により、3町46村が誕生しました。その後、合併や町制施行を経て、昭和20年代には恵那市、中津川市、瑞浪市へと統合されていきました。

郡の消滅

平成16年から17年にかけて、恵那市、中津川市への編入が進み、平成17年2月13日に恵那郡は消滅しました。

行政

歴代郡長

初代郡長は山村良貴で、郡役所は大井宿に設置されましたが、後に中津川村に移転しました。

郡会

明治30年に郡制が施行され、郡会が成立しました。郡会は、大正12年に廃止されました。

警察

恵那郡の警察署は、中津町に置かれ、岩村町に分署、大井町、付知町、坂下町、明知町に派出所や駐在所が設置されました。

裁判

裁判事務は岐阜地方裁判所御嵩区裁判所の管轄下にあり、中津町、岩村町、大井町、明知町、付知町に出張所が置かれました。

陸軍管区

恵那郡は、第三師管第五旅管岐阜連隊区に属していました。

脚注

本文中の数値や記録については、参考文献を参照してください。

参考文献

加藤護一 編『恵那郡史』恵那郡教育会、1926年
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 21 岐阜県、角川書店、1980年
『恵那市史　 通史編 　第1巻』　恵那市史編纂委員会　1983年
『中津川市史　上巻』中津川市　1968年
『木曽福島町史　第1巻 (歴史編)』1982年

関連リンク

旧高旧領取調帳データベース
岐阜県市町村合併等経過一覧表

関連項目

消滅した郡の一覧

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