長田雅喜

長田雅喜

長田 雅喜（おさだ まさよし）氏は、日本の社会心理学者として知られています。1936年1月27日に神奈川県相模原市で生を受け、2018年11月8日に82歳でその生涯を閉じました。名古屋大学名誉教授の称号を持ち、教育心理学の分野で博士号（名古屋大学）を取得しています。

研究者としてのキャリアは多岐にわたり、特に人と人との関わり、つまり対人関係、そして人が他者に惹かれるメカニズムである対人魅力、さらには人間心理の根源的なテーマである「愛」に関する探求に深く取り組みました。その研究成果は国内外で高く評価されています。

経歴と学問への道

長田氏の学問の道は、1954年に東京都立国立高等学校を卒業したことから始まります。その後、千葉大学旧文理学部心理学科に進み、1959年に卒業しました。さらに、社会心理学研究への情熱を深めるため、名古屋大学大学院教育心理学修士課程に進学し、1965年に修了。

大学院修了後、名古屋大学で助手を務めたのを皮切りに、岐阜大学で講師、助教授として教鞭を執りました。1970年からは再び名古屋大学に移り、助教授を経て1982年には教授に昇任。長きにわたり名古屋大学で教育と研究に尽力し、この間、1992年には「対人魅力に関する研究」によって教育学博士の学位を取得しています。1999年に名古屋大学を退官した後も、愛知学院大学総合政策学部教授として2007年まで教壇に立ち続けました。

研究テーマとゼロ点理論

長田氏の研究の中心は、一貫して人間の社会的な関わり、特に感情や認知が対人関係にどう影響するかという点にありました。対人魅力や愛といった、とかく曖昧になりがちなテーマに対し、社会心理学的な手法を用いて分析を試みました。これらの分野における彼の研究は、数多くの著書や論文として発表され、後進の研究者たちに大きな影響を与えています。

特筆すべきは、晩年に至るまで研究への意欲が衰えることなく、独自の「ゼロ点理論」という新たな枠組みを構築しようとしていたことです。これは、長年の研究で培われた知見を集約し、人間の心理や行動を根本から捉え直そうとする試みであり、亡くなる直前までこの理論に関する原稿執筆に取り組んでいたといいます。その理論の全貌が明らかになることはありませんでしたが、最期まで学問探求に情熱を燃やしたその姿勢は、多くの人々に感銘を与えました。

社会的貢献と学会活動

学術研究のみならず、長田氏は社会における様々な活動にも積極的に関わりました。日本社会心理学会や日本グループダイナミックス学会で理事を務め、それぞれの学会の発展に貢献。また、東海心理学会では委員長として地域の心理学研究の活性化に尽力しました。

さらに、学術界の外では、愛知県高齢者向けテレビ講座企画運営委員会の委員長として生涯学習の推進に関わるなど、教育や地域社会への貢献も大きかったです。名古屋大学出版会の理事、名古屋市蓬来コミュニティセンターの委員長（館長）も務めるなど、その活動範囲は広範に及びました。

著作と業績

長田氏の学術的な業績は膨大です。社会心理学や教育心理学に関する多くの著書や編著を執筆しており、『心理学』、『入門心理学』、『社会心理学』、『対人関係の心理学』など、共編著も多数手がけています。これらの書籍は、学生や研究者にとって重要な教科書や参考文献となりました。

また、専門分野に関する多数の論文を学術雑誌に発表しており、対人認知、対人行動、家族関係、コミュニケーション、対人魅力といった多様なテーマを探求しました。研究論文の他にも、評論や海外文献の翻訳も手がけ、学術知見の普及にも努めました。彼の著作や論文リストを見れば、社会心理学という分野に対する彼の深い理解と、多角的なアプローチがうかがえます。

栄誉と晩年

長年の教育・研究における功績が認められ、2016年5月には瑞宝中綬章を受章しました。これは、彼の貢献に対する国家からの高い評価を示すものです。

晩年も精力的に研究活動を続けていましたが、2018年11月8日、愛知県名古屋市昭和区の聖霊病院にて、甲状腺癌のため82歳で息を引き取りました。研究室を離れた後も、最期まで学問への情熱を失わず、独自の理論構築に打ち込んでいた彼の姿は、多くの人々の記憶に刻まれています。

長田雅喜氏は、社会心理学、特に人間の対人関係に関する分野において、教育者としても研究者としても多大な貢献を残しました。その業績は、今日の社会心理学研究の礎の一つとなっています。

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