甲状腺癌

甲状腺癌の概要

甲状腺癌とは、甲状腺の組織から発生する悪性腫瘍であり、主に甲状腺分化癌と未分化癌の2つに大別されます。甲状腺癌の約90％以上は分化癌で、これには乳頭癌、濾胞癌が含まれます。悪性度が高い未分化癌は周囲や遠方の臓器への転移を起こしやすく、早期発見と治療が重要です。特に、乳頭癌は最も一般的で、全甲状腺癌の約85%から90%を占めています。

甲状腺癌の種類

甲状腺癌は、以下の6つの主要な型に分類されます：
1. 乳頭癌 - 最も一般的で、女性に比較的多く見られる。
2. 濾胞癌 - 主に濾胞細胞から発生し、良性腺腫との鑑別が難しい場合が多い。
3. 低分化癌 - 分化癌と未分化癌の中間的な性質を持つ。
4. 未分化癌 - 非常に悪性度が高く、予後が悪い。
5. 髄様癌 - C細胞に由来し、遺伝的要因が絡むことがある。
6. 悪性リンパ腫 - 甲状腺内で発生するリンパ腫。

診断法

甲状腺癌の診断には主に超音波検査、穿刺吸引細胞診、そして腫瘍マーカーの測定が行われます。超音波検査では腫瘍の形状や内部構造を詳しく観察し、リンパ節転移の有無も確認します。特に穿刺吸引細胞診は、腫瘍が良性か悪性かを判別する上で重要です。乳頭癌や髄様癌では、特有の診断マーカーが用いられることがあります。

疫学と発症率

日本における甲状腺癌の発症率は増加しており、特に女性に多い傾向があります。2017年のデータでは、男性4,642人、女性13,448人、合計18,090人の患者が報告されています。また、2019年には男性619人、女性1,243人が甲状腺癌により死亡しています。日本人男性の5年生存率は91.3%、女性は95.8%と高く、早期発見と適切な治療がもたらす良好な結果を示しています。

治療法

甲状腺癌の主な治療法は手術です。特に分化癌に対しては、早期の手術が有効とされています。また、放射性ヨウ素治療やTSH抑制療法も用いられます。最近では、1cm以下の微小乳頭癌に関しては経過観察を行うことが認められており、過剰な治療を避ける方針が広がりつつあります。

予後

甲状腺癌は一般的に予後が良好ながんとされていますが、未分化癌の予後は極めて悪いとされています。分化癌の場合、手術後の再発率は比較的低く、長期にわたる観察が必要です。一方、未分化癌は急速に進行し、手術や治療を行っても短期間で死亡するリスクが高いです。

まとめ

甲状腺癌は、甲状腺で発生するさまざまな悪性腫瘍の一つで、その種類や進行度に応じて治療方法が異なります。特に早期発見と適切な治療が生存率に大きく影響しますが、過剰診断や治療が問題となることもあります。臨床での診断や治療方針は、今後も各国のガイドラインに基づいて進化が求められます。

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