長着

長着（ながぎ）について

長着とは、足首付近までの丈を有する長い衣服を指し、元々は「丈の長い衣服」という広い意味を持っています。この表現は、羽織や半纏、野良着などの短い衣服と対比される形で使用されました。

歴史と背景

長着は、江戸時代に普及した小袖に由来しています。特に女性用の長着は、着丈が長いため、必要に応じておはしょりをして着用されました。おはしょりとは、着物を折り返して長さを調整する着方のことです。対尺での着用（体型に合わせて着丈が合うスタイル）や、裾引きと呼ばれるスタイルも存在しました。裾引きは、上流社会や遊里、花柳界の富裕層の間で好まれ、現代では主に婚礼衣装や特定の儀式に見られることが多いです。一方で、女性用の対丈スタイルは、旅館の寝間着を除き、ほとんど姿を消しています。男性用長着は通常、対丈にて着用されます。

長着は、洋服が一般的に広がる前の日本の農漁村において、主に家で過ごす際の服装とされ、作業服としての二部式（上衣と腰巻・前掛けまたは細袴）と併用されました。これにより、長着はよりリラックスした場面での衣服としての位置付けを持っていました。さらに、袴着用時には、しばしば「半着」と呼ばれる上半身専用の着物が使用されました。

構造と各部の名称

長着は、複数の部位から構成されており、各部の名称は以下の通りです。

身頃と衽

• - 身頃：右の前身頃、左の前身頃、後身頃の合計で、身体を覆う部分です。右側と左側の2つの布で成り立っており、前身頃及び後身頃は縦に一枚の生地です。
• - 前身頃：身体の前面を覆う部分で、左右に分かれています。
• - 後身頃：背中側を覆う部分です。
• - 衽：前身頃の合わせ部分に縫い付けられた半幅の布で、衿の半ばから裾にかけて続きます。

衿

• - 衿：首と胸元を囲む部分で、細長い布からなります。汚れ防止のためにさらに重ねてつけることもあり、これを「掛け衿」と呼びます。
• - 掛け衿は、共布で作られることも多いです。

袖

長着の袖は、人体の肩先よりも下がった位置で取り付けられています。各部位には以下のような名称があります。

• - 袖：左右の腕を通す部分。
• - 袖口：手首を出すための開口部。
• - 袖刳：袖が縫い付けられる開口部。
• - 袂：袖の下部が垂れ下がった形状を指します。

八つ口

八つ口とは、着物の側面に存在する開口部のことです。長着には、首、足、両袖口、そして両脇の開口があり、合計8つの穴が存在します。これにより、着用時に動きやすさが確保されます。

人形

人形は、袖丈の一部で、袖付け以外の位置にある閉じた袂を指します。江戸時代では、男子用の袖も短かったため、次第に長くする必要が生まれ、人形というスタイルが定着しました。

結論

長着は日本の伝統衣装であり、その構造や各部位の名称は深い文化的背景を持っています。特に江戸時代から現代にかけての変遷を理解することは、日本の着物文化を理解する上で重要です。

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