長者橋 (横浜市)

長者橋は、神奈川県横浜市中区を流れる大岡川に架かる、横浜駅根岸道路の道路橋です。中区の長者町九丁目と日ノ出町一丁目を結び、地域における重要な交通路としての役割を担っています。

歴史

『横浜開港側面史』によると、横浜道が開通する以前は、東海道から横浜港への往来には、野毛浦や神奈川宿から洲崎弁天まで船が利用されていましたが、陸路では現在の浅間町から平沼、戸部を経由し、現在の長者橋の位置にあった粗末な橋を渡り、長者町の通り（当時は八丁畷と呼ばれていました）を南下して車橋から中村川沿いに至るルートが用いられていました。

嘉永4年の資料では、この「粗末な橋」は単に「土ハシ」と記録されています。その後、1873年（明治6年）1月25日、神奈川県令の大江卓から大隈重信に宛てられた文書では「権兵衛橋」と記述されています。この文書は、開港により外国人の馬車が増加し、従来の土橋が使用に耐えなくなったため、架け替えを求める内容でした。

この要請を受け、1874年（明治7年）5月には新たな木製の橋が完成しました。1870年（明治3年）に河野与七が八丁畷に貸家を整備し、その地が長者町と名付けられたことから、この橋も「長者橋」と命名されました。しかし、この橋は関東大震災によって焼失してしまいます。

震災後、国費を投じてコンクリート製のアーチ橋として再建されることになりました。1927年（昭和2年）に着工し、総工費10万653円（当時の金額）をかけて1928年（昭和3年）に竣工しました。この橋は、2022年（令和4年）3月には横浜市認定歴史的建造物として認定され、その歴史的価値が認められています。

周辺環境

長者橋は京浜急行日ノ出町駅に近く、同駅と伊勢佐木町方面を結ぶ重要な道として、多くの人々や車両が行き交います。橋の周辺では、大岡川と平戸桜木道路に挟まれたエリアで再開発が進められ、2015年3月には高層マンションと商業施設からなる「日ノ出サクアス」が竣工しました。また、同年5月には橋のたもとに横浜河川で初の浮桟橋である「横浜日ノ出桟橋」が完成し、水上交通の拠点としても利用されています。

夜間には橋の側面がライトアップされ、美しい景観を楽しむことができます。また、春には川沿いで桜まつりが開催され、多くの人々で賑わいます。

長者橋は、その歴史的背景と現代的な役割を併せ持つ、横浜のランドマークの一つとして、地域の人々に親しまれています。

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