長良川河口堰

長良川河口堰について

長良川河口堰（ながらがわかこうぜき）は、三重県の長良川の河口から5.4キロメートル上流に位置し、治水と利水を目的に建設された堰です。1988年に工事が始まり、1995年に完成を迎えました。この堰は長良川にとって初めてのものであり、建設される前は、本州で唯一、主流に堰が設けられていない大きな河川でした。

構想の経過

当初、長良川河口堰は工業用水を貯めるための施設として計画されました。しかし、30年以上にわたるさまざまな経緯を経て、重工業が水を必要としなくなったことから、計画は洪水防止を主な目的に変更されました。この変更に伴い、建設が進められることとなりました。

しかし、その建設に際しては様々な意見がありました。治水や利水の観点から建設を支持する声が上がる一方で、長良川の生態系や漁業への影響を懸念する意見もありました。そのため、漁業協同組合や自然保護団体、さらには全国のカヌー愛好者などが反対運動を展開し、建設の是非を巡る大きな論争が巻き起こりました。この論争は単なる「開発」と「環境保護」の問題を超え、誰がこの問題の当事者であるかや公共事業における税金の使い方、川の管理、産業とのバランスなど、さまざまな観点を提起しました。

働きと機能

長良川河口堰の主要な目的は、塩水の遡上を防ぎ、長良川の浚渫を行い、洪水を安全に流下させることです。その他にも、水道用水や工業用水の供給も重要な機能となっています。この堰は可動堰の形式を採用しており、堤頂の長さは661メートル、高さは8.2メートルです。建設に要した費用は約1500億円に達しました。

沿革と主要データ

長良川河口堰の歴史は1965年にさかのぼります。当初は木曽川水系に関連する工事計画が施行され、その後、1968年には建設の基本計画が閣議で承認されました。1976年には安八町で堤防の決壊が発生し、こうした洪水被害からの防止策が必要であることが認識されました。1978年には岐阜県知事が着工に同意し、1988年に本工事が始まりました。

その後、1994年に堰の建設が完了し、翌年には本格的な運用が開始されました。1997年には上流のマウンド浚渫が終了し、1998年には知多半島への送水が始まりました。

長良川河口堰は単なる水量調整の施設を超え、地域の環境保護や産業振興とも深く関わる重要なインフラとなっています。膨大な議論を経て完成したこの堰は、今後も長良川地域の水管理や生態系のあり方についての重要な課題を提示し続けるでしょう。

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