長谷工不動産

現在の株式会社長谷工不動産は、日本の建設大手である長谷工グループの一員として事業を展開する不動産会社です。かつては株式会社ジョイント・コーポレーションとして知られていました。

同社は1986年9月に株式会社ジョイントとして設立され、1989年9月に株式会社ジョイント・コーポレーションへ商号を変更しました。事業の柱の一つであるマンション分譲事業は1994年4月に開始され、「ブランシエラ」ブランドを冠した分譲マンションを中心に供給を行いました。創業当初は、初代代表取締役社長である天野里司氏のリーダーシップのもと、全国への事業拡大を目指し、「先進・先端・先鋭」という理念に基づいた、質の高いものづくりを追求しました。マンション分譲に加え、不動産流動化事業も手掛け、2008年3月期には、この流動化事業が売上高の半分以上を占めるほどに成長しました。

株式市場への上場も順調に進め、1998年11月に店頭公開を果たした後、1999年11月には東京証券取引所市場第二部へ、2001年3月には市場第一部へと指定替えを実現しました。子会社を通じた事業展開も行い、例えば2005年7月には子会社が運用するジョイント・リート投資法人がJ-REIT市場に上場するなど、多角的な不動産ビジネスを展開していました。

しかし、2008年秋に顕在化した世界的な金融危機は、不動産市況に深刻な影響を与えました。不動産流動化事業への依存度が高かった同社は、市況悪化の直撃を受け、業績は急速に悪化しました。倒産懸念や同業他社の破綻による連想売りなどから、株価は急落し、同年9月には100円を割り込む事態となりました。これに対し、2008年9月にはオリックスを引受先とする100億円の第三者割当増資を実施するとともに、200億円の融資枠を確保することで、一時的に経営の立て直しを図りました。ところが、根本的な事業環境の改善には至らず、2009年3月頃には市場全体の回復基調に乗り株価が一時的に上昇する場面もありましたが、厳しい経営状況が続きました。そして、2009年5月27日に構造改革による収益改善計画を発表したわずか2日後となる2009年5月29日、同社は関連子会社と合わせて東京地方裁判所へ会社更生法の適用を申請するという事態に至りました。この時点での負債総額は、連結で1,680億円に上りました。会社更生法の適用申請に伴い、同年6月30日をもって東京証券取引所における株式の上場は廃止されました。

会社更生手続開始後、同社は事業再生に向けて歩みを進めました。更生計画が裁判所から認可され、当初は株式会社レノがスポンサーとなり新株引受が行われましたが、その後スポンサーはTPGキャピタルと英・サヴィルズグループの共同出資会社へと変更されました。約4年間にわたる更生手続を経て、2013年3月31日付で東京地方裁判所より会社更生手続終結の決定を受け、2014年9月には更生手続に伴う弁済を完了させました。

更生手続終結後、同社に新たな展開が訪れます。2015年12月17日、長谷工コーポレーションとその子会社である不二建設が同社の全株式を取得し、長谷工グループの傘下に入りました。さらに、2017年4月1日には、かつて共に更生法を申請した子会社であるジョイント・レジデンシャル不動産が、株式会社長谷工不動産ホールディングスに商号を変更し、同社はその子会社となりました。

そして2019年4月1日付で、長谷工不動産ホールディングスから、分譲マンション事業（一部を除く）および賃貸マンション保有事業の移管を受け、商号を現在の「株式会社長谷工不動産」に変更しました。この「長谷工不動産」という社名は、実は2008年2月まで長谷工グループ内に同名の法人が存在しており、その名称が再び使用されることになったものです。

かつて、同社が経営破綻によって計画変更を余儀なくされた開発事業も存在します。例えば、沖縄県宜野湾市で計画されていたホテルや商業施設、京都駅前で進められていたショッピングモール計画などは、同社の破綻後に他社が引き継ぎ、現在はそれぞれムーンオーシャン宜野湾ホテル＆レジデンス、サンエー宜野湾コンベンションシティ、イオンモールKYOTOとして開業しています。また、過去には株式会社J・COMSのような関係会社も存在しましたが、こちらは破綻前にグループを離れ、後に他社との合併により解散しています。

現在、株式会社長谷工不動産は、長谷工グループの中核企業の一つとして、過去の困難を乗り越え、分譲マンション「ブランシエラ」をはじめとする住宅事業を中心に、新たな体制の下で事業活動を継続しています。

もう一度検索