長野堰

長野堰について

長野堰は、群馬県高崎市の中央部を流れる烏川から取水し、市内の農地に水を供給する重要な農業用水路です。その歴史は古く、10世紀にまで遡ります。

長野堰の歴史

長野堰の起源は、928年（延長6年）に長野康業が開発に着手したと伝えられています。その後、1551年（天文20年）には、長野康業の子孫である箕輪城主の長野業正によって大規模な整備が行われ、現在の長野堰の原型が作られました。当時、榛名白川は現在よりも烏川に近い場所で合流しており、そこから取水して榛名山南麓一帯を潤していました。その後、後北条氏、井伊氏、松平氏といった支配者が変わる中で、用水路の延伸や整備が各時代で行われ、灌漑範囲は拡大しました。

1708年（宝永5年）には、高崎藩主の大河内輝貞が榛名湖から隧道を掘って引水しようと試みましたが、これは実現しませんでした。その後、1904年（明治37年）になって、長野堰の水量を確保するために、榛名湖から榛名川を経由して烏川に水を流すための隧道が榛名山天神峠に開削されました。

長野堰の構造と特徴

現在の長野堰は、烏川中流の町屋橋から約300メートル上流にある高崎市本郷町の頭首工から取水しています。そこから水路は概ね南東方向に進み、高崎市街地の北部を横切ります。水路は一部暗渠になっている箇所もありますが、多くは地表の3面コンクリート水路として整備されています。住吉町からは一部が分水され、堰代町を経て高崎城の堀割に注ぎ込まれます。さらに東に進むと、高崎市東町で佐野分水が分岐し、南側の佐野地域を灌漑します。江木町の城東小学校南側では、地獄堰、上中居堰、矢中堰、倉賀野堰の4つの水路に分流します。

この分流地点では、以前は水量の配分をめぐって争いが絶えませんでしたが、1962年（昭和37年）に円筒分水堰が建設されたことで、この問題は解決されました。円筒分水堰は、サイフォンの原理を利用して各水路に公平に水を分配する、当時としては画期的な施設でした。分流された水は、各地域で利用された後、最終的には烏川や井野川に流れ込みます。

かんがい施設遺産

2016年（平成28年）には、長野堰はその歴史的価値と農業における重要な役割が評価され、国際かんがい排水委員会（ICID）のかんがい施設遺産に登録されました。

長野堰は、その長い歴史の中で、高崎市の農業を支え続けてきた重要なインフラです。その構造や運営には、先人たちの知恵と工夫が詰まっており、現代においてもその価値は色褪せることはありません。

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