長野電鉄デハ350形電車

長野電鉄デハ350形電車

長野電鉄デハ350形電車は、長野電鉄によって保有されていた制御電動車で、1927年に新しく製造された全鋼製の電車です。この車両は、当時の最新技術を取り入れた「川造形」として知られるデザインの典型例であり、長野電鉄の歴史の中で重要な役割を果たしました。

製造の背景

デハ350形の誕生は1926年から1927年にかけて行われました。長野電鉄は、川崎造船所に依頼し、4両を新製しました。この形式は、前身の長野電気鉄道や河東鉄道から継承されたデハ100形・デハニ200形とは異なり、合併後の長野電鉄として初めての新製車両です。特に、川崎造船所が設計・製造を担ったことにより、当時の他の私鉄車両とは異なる独自の外観と構造が実現されました。

デザインと技術

デハ350形は、全長17,120mmの全鋼製車体を採用し、リベット組立工法による丈夫な構造が特徴です。前面は非貫通の折妻構造で、運転台は両端に設けられています。初めに製造されたデハ351・352は左隅に運転台がありますが、後に製造されたデハ353・354は中央に運転台が配置されています。

さらに、冬の降雪に備えた空気式窓ガラス除雪装置や、片開きの客用扉、ロングシート仕様の室内など、使用目的に合った設計がなされました。また、屋根上にはお椀形ベンチレーターが設置され、通風を考慮した配慮も見受けられます。

主要機能

制御方式にはウェスティングハウス社の技術を用いた間接非自動制御が採用されており、発電制動機能も搭載されています。主電動機はウェスティングハウス製の直流直巻電動機で、効率的な駆動を実現しました。台車もボールドウィンA形を基本にした設計で、安定した走行性能が確保されています。

運用の変遷

デハ350形は1930年代から1950年代にかけて様々な改造を経て、1953年には形式番号がモハ600形へ変更されました。さらに、自動扉仕様の改造や、屋根上の冷却装置の取り付けなど、各時代のニーズに応じた改修が行われました。1970年代に入ると、長野線の地下化工事が進む中で、老朽化した旧型車両は徐々に淘汰され、1980年にはデハ350形も廃車となります。

保存状態

しかし、廃車後もその一部は上田交通に譲渡され、モハ612は改造を受けてモハ5271として新たに利用されました。また、モハ604はクハ271に改造され、数回の役割を果たした後、最終的には長野電鉄に返還され、保存されることになりました。現在、この車両は静態保存され、多くの鉄道ファンに親しまれています。

終わりに

長野電鉄デハ350形電車は単なる交通手段にとどまらず、地域の歴史や文化を象徴する存在となっています。その独特のデザインと技術は今も多くの人々に愛され、鉄道ファンの心を掴んで離しません。今後もその歴史を語り継ぎ、保存活動が続けられることが期待されます。

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