門司親徳

門司親徳：海軍から実業界へ、そして特攻隊の影

門司親徳(1917-2008)氏は、日本の海軍軍人であり、戦後は実業家として成功を収めた人物です。東京帝国大学経済学部卒業後、日本興業銀行に入社。しかし、太平洋戦争の勃発により海軍へ。短期現役の主計科士官として、数々の艦船や部隊に配属されました。

海軍時代：真珠湾攻撃から特攻隊編成まで

1941年、海軍経理学校に入校。同期には後の首相となる中曽根康弘氏や鳩山威一郎氏もいました。卒業後は戦艦「陸奥」、空母「瑞鶴」などに乗り組みました。太平洋戦争開戦後は、呉鎮守府、土浦航空隊、第551航空隊などに勤務し、主計長や分隊長として活躍しました。デング熱に罹患するなど、過酷な環境下での勤務を強いられました。

1944年、門司氏は第一航空艦隊に配属、副官に就任します。運命の出会いは、この時、第一航空艦隊長官に就任した大西瀧治郎中将との出会いでした。空襲下での冷静な対応に感銘を受けた大西中将は、門司氏を信頼するようになりました。そして、神風特別攻撃隊編成という歴史的決定における命令書起案という重要な任務を門司氏に託します。門司氏自身、その責任の重さに苦悩しながらも、大西中将や参謀らと共に起案に取り組んだと言われています。この経験は、門司氏の人生に大きな影響を与えました。

終戦後、門司氏は主計少佐の階級で海軍を退役します。激動の時代を生き抜いた門司氏は、開戦、特攻、終戦すべてを時代の流れとして受け止めていました。

戦後：実業界での活躍と戦友との絆

戦後、日本興業銀行に復職した門司氏は、1967年には取締役総務部長に昇進。その後、丸三証券社長、相談役を歴任しました。実業界での成功は、海軍時代に培った経験と能力が活かされたと言えるでしょう。

門司氏は、戦友との繋がりを深く大切にしていました。角田和男中尉らと親交を深め、「海軍ラバウル方面会」会長も務めました。靖国神社での慰霊祭では、祭文の朗読を予定していましたが、体調不良のため、副会長が代読しました。この慰霊祭後、体調を崩し、翌年、享年90歳で亡くなりました。その没日は、かつての上司である大西瀧治郎中将の自決日と同じ8月16日でした。

門司氏の遺言は「安全地帯にいる人の言うことは聞くな、が大東亜戦争の大教訓」という言葉でした。この言葉には、自らの経験から得た教訓と、後世への警鐘が込められていると言えるでしょう。

著作と門司親徳像

門司氏は、自身の経験を記した2冊の著作を発表しています。

『空と海の涯で 第一航空艦隊副官の回想』
『回想の大西滝治郎 第一航空艦隊副官の述懐』

これらの著作は、太平洋戦争、特に特攻隊に関する貴重な証言として、現在も高く評価されています。

門司親徳氏は、海軍軍人、実業家としてだけでなく、戦争を経験した世代の証言者として、その生涯は深く考えさせられるものです。彼の経験は、現代社会においても多くの示唆を与えてくれます。厳しい時代を生き抜いた彼の足跡は、未来への教訓として、私たちに語りかけてきます。

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