閉店時間

映画『閉店時間』概要

『閉店時間』は、1962年（昭和37年）4月18日に劇場公開された日本の長編映画です。カラー、シネマスコープサイズで制作され、同日には勝新太郎主演の『座頭市物語』も同時上映されました。

本作は、作家・有吉佐和子の同名小説を基にしており、脚本は白坂依志夫、監督は井上梅次が担当しました。企画は藤井浩明が手掛けています。物語の中心となるのは、同じ百貨店で働く3人の若い女性たち。彼女たちが仕事や日常生活の中で経験する恋愛や結婚といった普遍的なテーマ、そして働く女性ならではの悩みや自立への思いなどを、多角的な視点から描き出した青春文芸作品です。

主演には、当時の人気女優である若尾文子、野添ひとみ、江波杏子を迎え、それぞれの個性が光る役柄を演じています。また、川口浩、川崎敬三、竹村洋介といった俳優陣も脇を固め、物語に深みを与えています。百貨店の呉服売場、食品売場、エレベーターガールといった様々な部署で働く女性たちの姿を通して、当時の社会情勢や価値観が垣間見える点も興味深い作品と言えるでしょう。

物語

主人公は、同じ高校を卒業後、東京のデパートに入社した仲良しの3人、紀美子、節子、サユリです。配属された職場は異なりますが、休憩時間を利用しては互いの悩みや出来事を語り合い、心の支えとしていました。

松野紀美子（若尾文子）は呉服売場に勤務。真面目な性格ながらも一本気で、女性も男性と対等であるべきだと強い信念を持っています。

藤田節子（野添ひとみ）は食品売場で働く女性。家庭的なタイプで、日々の生活の充実を漠然と願いながら働いています。

牧サユリ（江波杏子）はエレベーターガール。自由な恋愛を満喫することを信条とし、閉店時間になると華やかな装いをして夜の街へ繰り出す奔放さを持っています。

このように、性格も価値観も異なる3人の女性が、それぞれの生き方の中で様々な男性との出会いを経験し、それぞれの恋愛模様が展開されていきます。デパートという職場の人間関係や、現代にも通じる働く女性の葛藤などが、彼女たちの視点を通してリアルに描かれています。

製作陣と出演者

本作のスタッフには、監督の井上梅次、脚本の白坂依志夫の他、撮影の中川芳久、美術の間野重雄、音楽の中村八大、照明の久保田行一、編集の鈴木東陽、録音の橋本國雄などが名を連ねています。協力として横浜髙島屋がクレジットされており、撮影に全面協力したことが伺えます。

主要キャストは以下の通りです。

松野紀美子（呉服売場）：若尾文子
藤田節子（食品売場）：野添ひとみ
牧サユリ（エレベーターガール）：江波杏子
生方誠（呉服売場の新入社員）：川口浩
畠英也（宣伝部の嘱託社員）：川崎敬三
竹井安雄（卸屋「大友屋」の社員）：竹村洋介
* ツルオカ（テープライブラリーの先生・声優）：大木実

その他、澁沢詩子、潮万太郎、夏木章、石井竜一、中条静夫など、多くの俳優が出演し、百貨店の賑やかな日常や登場人物たちの周囲の人々を演じています。

主題歌は、ペギー葉山が歌う「恋をさがしてる私」（キングレコード）が採用されました。オープニングクレジットでは「恋をさがして"いる"私」と表記されています。

本作は、有吉佐和子の優れた原作を基に、当時の若い女性たちのリアルな姿と悩みを映し出した、価値ある青春映画と言えるでしょう。

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