開放型文書体系

開放型文書体系（ODA）とは

開放型文書体系（Open Document Architecture、ODA）は、国際電気通信連合（ITU-T）が策定した、フリーかつオープンな文書ファイルフォーマットの国際規格です。既存のプロプライエタリな文書フォーマットの代替として、文書の相互運用性と長期保存を目指して開発されました。ODAの規格は、CCITT T.411からT.424で詳細が規定されており、これはISO 8613と同等の内容を持っています。日本では、JIS X 4101などが採用されていましたが、2009年に廃止されました。

ODAのフォーマット

ODAは、テキスト、ラスター画像、ベクターグラフィックスを統合した複合文書フォーマットを定義しています。初期の規格では、グラフィックスの構造としてCCITTラスターイメージとComputer Graphics Metafile (CGM)のみが定義されていました。これは、様々な画像ファイルフォーマットに対応する必要があった当時のワードプロセッサやDTPソフトウェアの負担を軽減する目的がありました。

文書は、論理構造とレイアウト構造の二つを持ちます。論理構造は、章、脚注などの要素に分割され、HTMLの要素に似ています。レイアウト構造は、WebのCascading Style Sheets（CSS）のような役割を果たします。ODAフォーマットのバイナリ転送形式は、Open Document Interchange Format（ODIF）と呼ばれ、SGMLとASN.1に基づいています。

文書は、Formatted、Formatted Processable、Processableのいずれかの形式で保存・交換できます。Processable形式は編集可能な形式であり、Formatted形式は編集不可で、Adobe PDFに似た役割を果たします。

ODAの歴史

1985年、欧州の研究プロジェクトESPRITがODAの試作に資金を提供し、Bull、オリベッティ、ICL、シーメンスなどが参加しました。この規格の目的は、時代に左右されない汎用の文書構造を定義し、あらゆるワードプロセッサやDTPで利用できるようにすることでした。

当時、ワードプロセッサのファイル形式はソフトウェアごとに異なり、技術の進歩と共に形式が頻繁に更新され、古い文書が利用できなくなるという問題がありました。企業は、古い文書を新しい形式に変換するために多大なコストを費やしていました。ODAは、この問題を解決し、長期的に利用できる文書フォーマットの普及を目指しました。

規格は1989年2月に正式にリリースされ、その後も改良が続けられ、最終版は1999年にリリースされました。しかし、文書ソフトウェア企業にはほとんど採用されず、普及には至りませんでした。規格策定に非常に時間がかかったことや、採用製品が少なかったことが、その原因と考えられます。ODAは、結果として失敗に終わりました。

しかし、ODAの理念は、HTMLとCSS、XMLとXSL、OpenDocumentなどの後の文書フォーマットに大きな影響を与えました。文書の構造とスタイルを分離するという概念や、相互運用性への配慮は、現代の文書フォーマットの基礎となっています。

まとめ

ODAは、文書の長期保存と相互運用性という重要な目標を掲げて開発されました。普及には至りませんでしたが、その理念と技術は、後の文書フォーマットに引き継がれています。ODAの試みは、文書フォーマットの歴史において、重要な転換点の一つとして位置づけられます。

参考資料

• - ODA規格は2007年9月7日に無料でダウンロード可能となっています（T.420 と T.423 は存在しません）。

- T.411 Introduction and general principles
- T.412 Document structures
- T.413 Abstract interface for the manipulation of ODA documents
- T.414 Document profile
- T.415 Open document interchange format (ODIF)
- T.416 Character content architectures
- T.417 Raster graphics content architectures
- T.418 Geometric graphics content architecture
- T.419 Audio content architectures
- T.421 Tabular structures and tabular layout
- T.422 Identification of document fragments
- T.424 Temporal relationships and non-linear structures

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