OpenDoc

OpenDoc（オープンドック）とは

OpenDocは、Apple Computer（現Apple）が開発した、複合ドキュメントとドキュメント中心の操作を実現するための技術です。Apple版OLEとも言えるこの技術は、コードネーム「Bento」として知られ、「オープン」という名前が示すように、公開された技術でした。

OpenDoc の背景

AppleはOpenDoc開発以前に、「発行と引用」という機能を開発していました。この機能では、対応するワープロソフトなどで作成した文書を発行すると、他のアプリケーションで作成中の文書に、ほぼそのままの形で引用できました。クリップボードとは異なり、発行側のデータを編集すると、引用側にも変更が反映される点が特徴でした。

OpenDoc の仕組み

OpenDocは、従来のアプリケーションに相当するパートエディタと、エディタが提供するパート、そして作成されたドキュメントの3つで構成されています。文書作成は以下の手順で行います。

1. ドキュメントの雛形を開く
2. 必要なパートをドロップしてフレームを作成
3. フレームのレイアウトを決定
4. パートエディタで編集（パートを選択するとエディタが切り替わる）
5. 必要に応じて2〜4を繰り返す

※コンテナパートでないと、他のパートを含めることはできません。

OpenDoc の敗因

OpenDocは、技術的な問題は少なかったにも関わらず、普及しませんでした。その背景には、以下のような要因がありました。

劇的な方針変更: 1997年3月、AppleはOpenDocを次期OSから廃止し、NextStepベースの「Rhapsody」への移行を発表しました。この発表は開発者の混乱を招き、OpenDocの普及を妨げました。
Javaの台頭: Javaもコンポーネントベースの技術として宣伝されたため、OpenDocの必要性が薄れてしまいました。
開発の遅れ: OpenDocは、Apple、IBM、ノベルの3社連合で開発されました。マルチプラットフォーム対応を目指したために仕様統一に時間がかかり、開発が遅延しました。ノベルは途中で開発を断念し、IBMも後にOS/2を断念しました。Macintosh版も、次期OS「Copland」を前提としていたため、従来のOSでの実装に手間がかかりました。
Windows版の頓挫: 当時市場を独占していたWindows版の開発がノベルの撤退により頓挫したことも、普及を妨げる要因となりました。

OpenDocのその後

2007年、ファイルメーカー社（現クラリス）は、個人向けデータベースソフト「Bento」を発表しました。このソフトはOpenDocと直接的な関連はないものの、技術的な影響が指摘されています。

また、System 7.1以降、全ての文書ファイルに「ひな形」という属性が付与されています。この機能はmacOSにも残っており、Finderの「情報を見る」から設定できます。ひな形に設定されたファイルはテンプレートとして機能し、直接編集することはできません。この機能により、ドキュメント中心の作業が可能になります。

OpenDocの教訓

OpenDocは、技術的には優れたコンセプトを持っていたものの、市場の動向や開発体制の問題、そしてApple自身の戦略の変更によって、そのポテンシャルを十分に発揮することができませんでした。しかし、その技術の一部は、後の製品やシステムに影響を与え続けています。

もう一度検索