開放弦

開放弦とは

開放弦とは、弦楽器を演奏する際に、指で弦を押さえずに音を出すこと、または指で弦を押さえていない状態そのものを指します。弦楽器の演奏において、開放弦は独特の音色と響きを生み出し、楽曲に多様な表情を与える重要な要素となっています。

開放弦の概要

弦楽器では、一般的に弦の長さを変えることで音の高さを調節します。指で弦を押さえることで、弦の振動する長さを短くし、音を高くするのが基本的な仕組みです。ヴァイオリンやギターのような楽器では、指板と呼ばれる板に弦を押し付けることでこの調節を行います。一方で、ハープのように弦の長さを変える機構を備えている楽器もあります。

これらの楽器において、弦を全く押さえない、つまり弦の振動長を最大にした状態が開放弦です。開放弦は、弦が大きく振動するため、他の音に比べて豊かな響きが得られます。また、他の弦の音が開放弦と同じ高さや倍音の関係にある場合、共鳴して音が増幅されることもあります。

開放弦は、意図的に活用されたり、逆に避けられたりします。西洋楽器以外の楽器では、積極的に利用されることが多いです。

各楽器における開放弦

和楽器

三味線、琵琶、胡弓といった和楽器では、開放弦に音階の主要な音を設定するのが一般的です。特に三味線では、一の糸（最低音弦）の開放弦に「さわり」という特殊な機構があり、これが他の弦の音と共鳴して独特の響きを生み出します。楽琵琶では、調によって開放弦の調弦を変えます。また、三味線や胡弓などでは、演奏中に調を変えるために開放弦の音高を調整することもよくあります。これらの楽器では、開放弦が音色の豊かさや音階の基礎を形成する上で不可欠な役割を果たしています。

ヴァイオリン属

ヴァイオリン属の楽器では、指で弦を押さえることで音色や強さを変化させることができます。しかし、開放弦は指による制御が効かないため、フレーズの中で開放弦の音が際立ってしまうことがあります。また、開放弦ではビブラートをかけることが難しいという制約もあります。そのため、ヴァイオリン属の楽器では、開放弦の使用は、和楽器と比較すると、比較的限定的です。ただし、開放弦ならではの響きを意図的に利用して、音楽に特殊な効果を加えることもあります。特に無伴奏曲では、開放弦と同じ音を別の弦で鳴らすことで、音色に変化を持たせたり、制御を加えたりするテクニックも用いられます。古典派時代の音楽では、開放弦は積極的に活用されたと考えられています。

まとめ

開放弦は、弦楽器の演奏において、弦を指で押さえないことで生まれる特別な音であり、その音色や響きは楽器や音楽の種類によって、様々な役割を担います。開放弦を理解することは、弦楽器の演奏表現を豊かにする上で重要な要素と言えるでしょう。

参考文献

A.Casella, V.Mortari - La Technica dell orchestra contemporanea, リコルディ, 1950.
H.Berlioz, R.Strauss - Intrumentationslehre, ペータース, 1905

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