閖上

宮城県名取市閖上（ゆりあげ）

概要

閖上は、宮城県名取市に位置する地区で、太平洋に面した漁港町です。かつては漁業で栄えましたが、2011年の東日本大震災による津波で壊滅的な被害を受けました。現在は復興が進められ、新たな住宅地や商業施設が整備されています。

住所：宮城県名取市閖上一丁目および七丁目
人口：87人（2024年4月30日現在）
世帯数：47世帯（2024年4月30日現在）

由来

「閖上」という地名の由来は、江戸時代に遡ります。仙台藩主・伊達綱村が、大年寺からの帰路に遠くに見える波打つ浜を見て、その名を尋ねた際、近侍の者が「ゆりあげはま」と答えたものの、文字がないと答えました。そこで綱村は、「門の内から水が見える」として、「閖上」という字を当てたとされています。この「閖」という文字は、仙台藩専用に作られたもので、「揺れる」という意味を持つ「ゆれる」にも通じるとされています。

歴史

江戸時代

江戸時代、閖上は仙台藩直轄の港として、魚介類の取引で賑わいました。漁業だけでなく農業も営む半農半漁の地であり、独特の文化が育まれました。漁師と農民の言葉遣いや風習が混ざり合う地域でした。

明治時代

1889年、閖上を含む周辺の村が合併し、東多賀村が発足しました。当時の閖上には380世帯があり、その多くが漁業に従事していました。小型漁船が30艘ほどあり、沿岸漁業が盛んに行われていました。また、5軒の魚問屋があり、競り落とされた魚は仙台や近隣の町村に販売されていました。

1903年には、閖上浜漁業組合が結成され、漁業の改善に取り組むようになりました。

大正時代

大正時代になると、漁船の動力化が進み、漁業はさらに発展しました。製氷会社が開業し、閖上で水揚げされた魚が県外にも出荷されるようになり、活況を呈しました。1926年には、増田駅から閖上を結ぶ軽便鉄道が開業しましたが、1938年に廃止されました。

1928年、東多賀村は町制を施行し、閖上町となりました。

昭和時代

1939年、閖上は第2種漁港に指定され、港の修築が計画されました。太平洋戦争中は漁獲量が減少しましたが、戦後には大型漁船が登場し、遠洋漁業も行われるようになりました。1955年、閖上町は周辺町村と合併し名取町となり、その後、市制を施行して名取市となりました。

東日本大震災

2011年3月11日、東日本大震災が発生し、閖上は津波により壊滅的な被害を受けました。しかし、復興に向けた取り組みが進められ、閖上漁港での朝市の再開や、住宅地の整備、慰霊碑の建立などが行われています。

復興と現在

震災後、閖上では、4メートル前後の盛り土によるかさ上げが行われ、新たな住宅地が整備されました。また、「かわまちてらす閖上」などの商業施設もオープンし、地域住民の生活を支えています。カナダ政府の支援により、朝市エリアには「メイプル館」が設置され、水産資源の復興も進んでいます。特に、閖上産のシラスは「北限のシラス」としてブランド化され、「閖上しらす祭り」が開催されるなど、地域を盛り上げています。

震災の経験を後世に伝えるため、資料館「閖上の記憶」が開設され、震災前の閖上の文化や歴史を伝える活動も行われています。また、郷土史家による書籍も出版され、閖上の文化や方言が記録されています。また、震災で閉鎖されていたヨットハーバーも再開し、ヨット選手権が開催されるなど、新たな活気が生まれています。震災で全壊した閖上湊神社の移転・再建も完了しています。

周辺施設

名取市立閖上小中学校（小中一貫校）
閖上駅（廃駅）
貞山運河
クマノテドット本社（ウェブ制作会社）
旧鈴木英二邸（震災遺構）
閖上漁港

閖上漁港

閖上漁港は、宮城県が管理する第2種漁港です。名取川河口の潟湖である広浦に位置しています。かつては名取川の河口を経由して外洋に出入りしていましたが、土砂の堆積により漁船の入出港が困難になったため、1983年に外洋へ直接通じる新たな航路が建設されました。2001年には、この新航路が開通し、同年の国民体育大会のヨット競技が閖上漁港で開催されました。

閖上は、震災を乗り越え、新たな一歩を踏み出しています。歴史と文化を大切にしながら、復興と発展を続けるこの地を、これからも見守っていきたいと思います。

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