関保之助

関保之助：有職故実と甲冑を究めた生涯

関保之助(1868-1945)は、明治から昭和時代にかけて活躍した、日本屈指の有職故実家であり、甲冑武器の考証家として知られています。東京帝室博物館学芸委員や重要美術品等調査委員を歴任し、その深い知識と卓越した蒐集眼から、小堀鞆音と並ぶ東都を代表する蒐集家としても名声を博しました。本名は保之助、筆名に波爾和、号には花郷、加和羅廼舎、箙廼舎を用いています。

美術への道から故実研究へ

1868年、江戸小石川原町（現在の東京都文京区）にて、一橋徳川家臣・関守真の次男として生まれた関保之助は、幼少期から古武器に魅せられ、歴史画家を志しました。その情熱を胸に、明治23年9月、東京美術学校に入学。横山大観や下村観山らと共に学んだ彼は、日本画を専攻し、明治26年7月には同校の第1回卒業生として絵画科を卒業、卒業制作の「藤原式室内装飾図」はパリ万国博覧会に出品されるなど、高い評価を得ました。

卒業後は石川県工業学校で教鞭をとりましたが、視力の弱体化（乱視）により画家としての道を断念。その後、関保之助は有職故実の研究に没頭するようになります。

帝室博物館での活躍と研究活動

東京美術学校助教授や帝国美術歴史編纂掛を経て、明治34年には帝国大学史料編纂委員に就任。その後、大正8年には京都帝室博物館学芸委員、大正11年には同館列品課長、大正13年には奈良帝室博物館列品課長を歴任しました。昭和8年には東京帝室博物館学芸委員に就任するなど、帝室博物館において長年に渡り重要な役割を担いました。母校である東京美術学校に加え、京都帝国大学でも教鞭をとり、後進の育成にも尽力しました。明治41年には靖国神社附属遊就館整理事業の整理委員も務めています。

関保之助は多くの著作を残したわけではありませんが、『式正の鎧』（口述）など、貴重な研究成果を世に残しています。また、講演や談話を通して自身の研究成果を積極的に発表し、多くの人々に有職故実や甲冑の知識を広める役割を果たしました。

悲劇的な最期とその後

昭和20年、東京大空襲により、渋谷区千駄ヶ谷2丁目の自宅で、二男夫婦以外の家族と共に戦災で亡くなりました。没後、昭和25年には従五位に叙せられました。彼の死は、日本の美術史研究に大きな損失をもたらしました。しかし、関保之助が残した研究成果や、後進への教育は、現在でも高く評価されており、日本の美術史研究に多大な影響を与え続けています。

主要な著作

関保之助は多くの著作を残してはいないものの、以下の書籍や論文に彼の研究成果が反映されています。

『日本歴史服装掛図』 後編（村瀬義徳画、関保之助校閲）
『本邦服装沿革』
『歴代服装図録』 染織祭篇（編著）
『大楠公六百年祭写真帖』（編著）
『式正の鎧』
『日本名冑図録』（解説）
「奈良朝時代刀剣の外装」
「日本の甲冑について」
「正倉院の刀剣」
『沼田頼輔・関保之助集』（編著）

これらの著作を通して、関保之助は日本の美術史、特に有職故実や甲冑に関する深い知識と見識を示しました。彼の研究は、現代の研究者にとっても貴重な資料であり続けています。

師と弟子

関保之助は、在原古玩を師として学び、末永雅雄を弟子として指導しました。師弟関係を通じて、日本の美術史研究は継承され、発展を遂げました。

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