関吉の疎水溝

関吉の疎水溝



関吉の疎水溝は、鹿児島県鹿児島市下田町に位置する、1852年（嘉永6年）に築造された歴史的な用水路です。この疎水溝は、薩摩藩第28代当主である島津斉彬が推進した集成館事業の重要な動力源として利用されました。2015年には、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つとして、ユネスコの世界文化遺産に登録され、その歴史的・文化的価値が国際的にも認められています。

概要



疎水溝の全長については諸説ありますが、鹿児島市の資料では稲荷川上流から仙巌園まで約8km、別の資料では6,510m、また、2006年の調査では約7kmとされています。しかし、都市開発や災害の影響で、現在は実方橋の手前で途絶えており、約3kmが現存しています。現存する一部は、農業用水路として今も利用されています。また、この疎水溝は「かごしま自然百選」にも選ばれており、自然と歴史が調和した景観が評価されています。2005年には鹿児島市の史跡に、2013年には国の史跡「旧集成館」に追加指定されました。さらに、2009年には九州・山口の近代化産業遺産群の構成資産の一つとして世界遺産の暫定リストに掲載され、2015年に正式に世界遺産登録に至りました。

疎水溝は、鹿児島市川上町で稲荷川から取水し、溶結凝灰岩の地盤上に水路を設け、磯までの約8kmを緩やかな傾斜で繋いでいます。取水口の海抜高度は132m、尚古集成館付近では124mと、わずか8mの高度差しかありません。この緩やかな勾配は、当時の高度な土木技術を示すものです。1857年の「薩州見取絵図」には、溶鉱炉への給水路や筧が描かれており、当時の様子を垣間見ることができます。

関吉には、岩盤をくり抜いた稲取川の取水口跡がほぼ当時のまま残されており、一部は現在も水田の用水路として利用されています。途中には滝があり、「巌洞の滝」として知られています。水路は、上流では棈木川に沿って、下流では稲取川沿いに流れています。現在の取水口は、1913年の洪水後に改修されたものです。

沿革



島津斉彬は、財政再建と富国強兵を目指し、集成館事業に着手しました。この事業は、アジア初の近代洋式工場群を建設するものでした。当初、反射炉や鑽開台などの動力源は、まだ実用化されていなかった蒸気機関ではなく、水力に頼らざるを得ませんでした。仙巌園には、1722年（享保7年）に下田町関吉から吉野疎水が引かれていましたが、1852年にそこから新たな水路を設け、集成館の水車に水を供給しました。この工事では18箇所ものトンネルを掘削するという大規模なものでした。

課題



関吉の疎水溝は、鹿児島市内での認知度が低く、その歴史的価値を広く伝えるためのPR活動やガイドの育成が求められています。

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