関根賞

関根賞（せきねしょう）は、平安時代の文学、特に私家集研究の分野で顕著な功績を残された関根慶子お茶の水女子大学名誉教授の業績を讃えるために創設された文学研究賞です。関根氏自身が拠出した基金を基に、1993年から毎年選考が行われてきました。

この賞の大きな特徴は、平安文学および平安時代の語学分野で優れた研究を行った女性研究者を積極的に顕彰することを目的としている点です。選考の対象となるのは、毎年1月から12月までの暦年の間に発表された、平安文学に関する意欲的な研究成果です。厳正な審査を経て受賞が決定すると、受賞者には栄誉ある賞状と、研究活動への奨励として賞金20万円が贈呈されます。

関根賞の歴史は、1993年の創設以来、一度中断を経験しています。しかし、その後2006年には「第2次」として見事に復活し、再び毎年優れた研究者を称賛する場となりました。復活以降も多くの研究者がこの賞を受賞し、平安文学研究の発展に貢献してきました。しかし、惜しまれながらも、この賞は2022年度の選考をもってその役目を終え、終了することが決定しています。約30年にわたり、多くの女性研究者の励みとなり、研究水準の向上に寄与した関根賞の功績は大きいと言えるでしょう。

以下に、これまでの主な受賞者と受賞作を記します。

第1回（1993年）
望月郁子『類聚名義抄の文献学的研究』（笠間書院）
河添房江『源氏物語の喩と王権』（有精堂出版、のち『源氏物語表現史』と改題、翰林書房）
第2回（1994年）該当作なし
第3回（1995年）
宮川葉子『三条西実隆と古典学』改訂新版（風間書房）
第4回（1996年）
米田明美『「風葉和歌集」の構造に関する研究』（笠間書院）
第5回（1997年）
清水婦久子『源氏物語の風景と和歌』（和泉書院）
第6回（1998年）
安田徳子『中世和歌研究』
第7回（1999年）
斎藤煕子『赤染衛門とその周辺』（笠間書院）
第8回（2000年）
張龍妹『源氏物語の救済』（風間書房）
第9回（2001年）
胡潔『平安貴族の婚姻慣習と源氏物語』（風間書房）
第10回（2002年）該当作なし
第11回（2003年）
新田孝子『栄花物語の乳母の系譜』（風間書房）
加藤静子『王朝歴史物語の生成と方法』（風間書房）
第12回（2004年）
圷美奈子『新しい枕草子論 主題・手法 そして本文』（新典社）
第2次 第1回（2006年）
中村文『後白河院時代歌人伝の研究』（笠間書院）
近藤みゆき『古代後期和歌文学の研究』（風間書房）
第2次 第2回（2007年）
丁莉『伊勢物語とその周縁－ジェンダーの視点から』（風間書房）
第2次 第3回（2008年）
渡邉裕美子『最勝四天王院障子和歌全釈』（風間書房）
第2次 第4回（2009年）
和田律子『藤原頼通の文化世界と更級日記』（新典社）
第2次 第5回（2010年）
植田恭代『源氏物語の宮廷文化 後宮・雅楽・物語世界』（笠間書院）
第2次 第6回（2011年）
岡嶌偉久子『源氏物語写本の書誌学的研究』（おうふう）
第2次 第7回（2012年）
李宇玲『古代宮廷文学論-中日文化交流史の視点から』（勉誠出版）
第2次 第8回（2013年）
家永香織『転換期の和歌表現 院政期和歌文学の研究』（青簡舎）
第2次 第9回（2014年）
大津直子『源氏物語の淵源』（おうふう）
第2次 第10回（2015年）
内田美由紀『伊勢物語考―成立と歴史的背景』（新典社）
第2次 第11回（2016年）
鳥井千佳子『忠通家歌合新注』（青簡舎）
第2次 第12回（2017年）
山中悠希『堺本枕草子の研究』（武蔵野書院）
第2次 第13回（2018年）
金光桂子『中世の王朝物語 享受と創造』（臨川書店）
第2次 第14回（2019年）
諸井彩子『摂関期女房と文学』（青簡舎）
第2次 第15回（2020年）
上野英子『源氏物語　三条西家本の世界―室町時代享受史の一様相』（武蔵野書院）
高橋由記『平安文学の人物と史的世界―随筆・私家集・物語―』（武蔵野書院）
第2次 第16回（2021年）
瓦井裕子『王朝和歌史の中の源氏物語』（和泉書院）
第2次 第17回（2022年）
川上知里『今昔物語集攷―生成・構造と史的圏域―』（花鳥社）

もう一度検索