関沢明清

関沢明清：日本の水産業近代化の先駆者

関沢明清（せきざわ あけきよ）は、天保14年（1843年）に加賀藩士の家に生まれ、明治30年（1897年）に没した水産官僚です。彼は日本の水産業の近代化に尽力し、その功績は今日でも高く評価されています。

生涯

関沢は幼少期から学問に励み、蘭学や英語を修めました。戊辰戦争後、新政府に出仕し、明治6年（1873年）にはウィーン万国博覧会の事務官として渡欧します。この万博で、彼は水産業の重要性に目を開かれ、帰国後、水産技術の導入と普及に奔走することになります。

万国博覧会での出会い

ウィーン万国博覧会で水産業の重要性を認識した関沢は、フィラデルフィア万国博覧会にも参加し、アメリカで最新の養殖技術や缶詰製造技術を学びました。特に、リヴィングストン・ストーンから鱒の人工孵化技術を学んだことは、その後の日本の水産業に大きな影響を与えました。

鱒の養殖実験

帰国後、関沢は内務卿大久保利通に建議し、勧業寮に水産掛を設置させ、自ら鱒の養殖に着手しました。茨城県や栃木県で捕獲した鱒を用いて人工授精を行い、神奈川県や埼玉県などの養魚場に卵を運び、孵化させました。孵化した稚魚は、相模川や木曽川などの河川に放流され、日本の内水面養殖の基礎を築きました。

農商務省での活躍

明治14年（1881年）に農商務省が設立されると、関沢は農務局に配属され、水産行政の中核を担いました。彼は、アメリカ式の巾着網漁を導入し、九十九里浜での鰯漁の改善を指導しました。また、アメリカ式の捕鯨砲を用いた近代捕鯨を試み、日本の捕鯨業の近代化にも貢献しました。

アメリカ式捕鯨の試み

関沢は、幕末以来近代化が進んでいなかった日本の捕鯨業に着目し、アメリカ式の捕鯨技術を導入しようとしました。彼は、勝山町の捕鯨団にアメリカ式捕鯨を指導し、伊豆大島近海でツチクジラの捕獲に成功しました。この成功をきっかけに、日本水産会社が設立されましたが、経営難により解散。その後、関沢は自ら関沢水産製造所を設立し、捕鯨業に尽力しました。

死去

関沢は、明治26年（1893年）に朝鮮での漁業視察中に心臓病を発症し、明治30年（1897年）に亡くなりました。享年55歳でした。

功績

関沢明清の功績は多岐にわたりますが、特に以下の点が挙げられます。

日本初の鱒の人工孵化の成功
アメリカ式漁法の導入と普及
日本の近代捕鯨の基礎を築いたこと
水産教育機関の設立

彼は、日本の水産業の近代化に大きく貢献した人物として、後世に語り継がれています。

逸話

関沢は、地方の漁村を巡回する際、漁民たちに「日本第一の福神は大黒様と蛭子様である」と説き、農業と漁業の重要性は平等であると説きました。そして、漁民たちが農業者ほど努力していないため、その富も農業者を下回っていると指摘し、漁業に励むよう促しました。この逸話は、関沢が水産業の振興に情熱を注いでいたことを物語っています。

家族

関沢は、菅原氏を名乗っていましたが、一族には藤原氏や清原氏を祖とする系図も残っています。父は加賀藩士の関沢房清、母は三善氏の幾です。兄弟には、川崎造船所の経営に関わったとされる兄の関沢安太郎や、朝鮮や台湾で漁業を振興した弟の鏑木余三男がいます。長男の廉は、東京専門学校を卒業後、渡米してロサンゼルス近郊で漁業を営みました。次男の房豊は、東京帝国大学を卒業後、三菱造船所で軍艦建造に従事しました。

まとめ

関沢明清は、日本の水産業の近代化に多大な貢献をした先駆者です。彼の功績は、今日の日本の水産業の発展に繋がっています。彼の情熱と行動力は、現代の私たちにとっても学ぶべき点が多くあります。

もう一度検索