関矢橘太郎

関矢 橘太郎

関矢 橘太郎（せきや きちたろう、または きつたろう）は、1863年10月26日（文久3年9月14日）に生まれ、1912年（明治45年）4月10日に没した、明治時代に活躍した日本の農業経営者、実業家、そして政治家です。

諱は忠和、号は雙柳と称しました。

生い立ちと家系

越後国魚沼郡並柳新田（現在の新潟県魚沼市の一部）の、地域の有力者である素封家、関矢孫左衛門の長男としてこの世に生を受けました。彼の父である孫左衛門もまた、後に衆議院議員を務めた人物であり、橘太郎は政治と経済の両面で活躍する家系に生まれ育ったと言えます。

実業家としての活動

橘太郎は、家業である農業経営に加え、多岐にわたる実業活動を展開し、地域の経済発展に貢献しました。

早くも1881年（明治14年）には、地域の冬期の副業として機織工場の設立に力を注ぎ、殖産会社を立ち上げてその経営の要である頭取を務めました。これは、冬の間の農閑期における収入源を確保し、地域住民の生活向上を図るための取り組みでした。

また、教育や啓蒙活動にも熱心でした。1883年（明治16年）には同志とともに益友会を結成し、教育の補修や知識の交換、学術の研鑽に努めました。

医療分野への貢献も見られ、1897年（明治30年）には小出町（現在の魚沼市の一部）に病院を設立するなど、地域住民の福祉にも心を配りました。

さらに、当時の日本を代表する産業である石油事業にも深く関与しました。1899年（明治32年）には小千谷石油の設立に参画し、取締役の一員としてその経営に携わりました。その他にも、地元の小出銀行で監査役を務めたほか、日本石油、魚沼鉄道（現在の魚沼線）、銀山拓殖といった、当時の主要な企業や事業体の重役を歴任し、その経営手腕を発揮しました。これらの活動は、地域のインフラ整備や資源開発にも繋がる重要な役割を果たしました。

政治家としての道のり

実業家として確固たる地位を築く傍ら、橘太郎は政治の舞台にも足を踏み入れました。

まずは地方政治からスタートし、地元の下条村で村長を務め、その手腕を認められました。その後、魚沼郡会議員として郡政にも関与しました。

1894年（明治27年）には新潟県会議員選挙で当選を果たし、県政に進出しました。県会議員としては、同参事会員や地方森林会議員といった要職も兼任し、地域の発展と振興に尽力しました。

そして、1908年（明治41年）5月に実施された第10回衆議院議員総選挙において、新潟県郡部選挙区から憲政本党の公認候補として立候補し、当選を果たしました。これにより、国政の舞台で活動する機会を得、衆議院議員として1期在任しました。

しかしながら、残念なことに、衆議院議員としての任期半ばである1912年（明治45年）4月に、この世を去りました。地域社会や実業界、そして国政において、さらなる活躍が期待されていた中での早すぎる死でした。

親族

関矢家は、橘太郎だけでなく、その親族もまた政財界で重要な役割を果たした人々を輩出しています。

父である関矢孫左衛門も衆議院議員を務め、親子二代にわたって国政に関わりました。

また、二男の関矢孫一も後に衆議院議員となり、関矢家は三代にわたる衆議院議員を輩出したことになります。

娘たちもまた、有力な家系に嫁いでいます。長女の静は、日本石油の社長を務めた内藤久寛の養子である内藤篤郎の妻となりました。また、娘のアイは、衆議院議員を務めた飯塚知信の妻となっています。これらの婚姻関係は、関矢家が当時の日本の政財界において、広範かつ強固なネットワークを持っていたことを示しています。

関矢橘太郎は、明治期において、新潟県の地域社会、経済界、そして政界で多大な影響力を持った人物であり、その実業家としての先進的な取り組みや、地方から国政へと至る政治家としての歩みは、当時の地方有力者の活動を示す好例と言えるでしょう。

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