関立戦

関立戦（アメリカンフットボール）

「関立戦（かんりつせん）」とは、関西学院大学と立命館大学という関西を代表する二つの大学のスポーツ対戦を指す名称です。元々は様々な競技に用いられますが、近年では特にアメリカンフットボール部同士の対戦を指すことが多く、半ば固有名詞のように使われています。立命館大学側では「立関戦（りっかんせん）」と呼ばれることもあります。本稿では、関西学生アメリカンフットボールリーグDIVISION.1に所属する両校のアメフト部間の対戦の歴史を中心に記述します。

沿革

黎明期と立命館の苦難

立命館大学のアメリカンフットボール部は、1953年に誕生しました。これは関西では5番目の創部にあたります。この時期、関西学生リーグは関西学院大学が圧倒的な強さを誇っており、黎明期の立命館は常にリーグ下位に甘んじていました。初の関立戦では、関西学院が132対0という記録的な大差で勝利しています。その後も立命館の苦戦は続き、1971年には下部リーグである近畿学生リーグへの降格も経験しました。チームは1983年に1部リーグに定着するまで、実に9年間を2部リーグで過ごしています。1984年に平井英嗣氏がヘッドコーチに就任し、チームは着実に力をつけ、1985年には初の同率2位に躍進しましたが、1980年代は関西学院大学と京都大学の2強の壁を崩すことはできませんでした。しかし、1987年にはスポーツ推薦制度の第1期生が入学するなど、チーム強化への取り組みが進められました。

立命館、初勝利へ（1990-1993）

長年の努力が実を結び、1990年に立命館は関西学院に対し、13対12で歴史的な初勝利を挙げます。この年、立命館は京都大学にも勝利しましたが、神戸大学に敗れ、近畿大学と引き分けたため、優勝を逃しました。1992年にも関立戦で17対10と勝利しましたが、やはり京都大学に敗れ、またしても優勝には手が届きませんでした。このように、1993年までの時期は、立命館が関西学院や京都大学といった強豪に勝利する力はつけながらも、リーグ優勝を達成するには至らないという状況でした。

立命館の初優勝とその隆盛（1994-1996）

1993年に監督に就任した平井英嗣氏は、1994年に練習拠点を現在のびわこ・くさつキャンパスに移転するという大胆な改革を断行します。この年、QB東野稔、LB河口正史、DB近藤真人、RB中村友といった才能豊かな選手を擁した立命館は、第5節で京都大学に勝利し、最終節の関西学院大学との直接対決に全勝同士で臨むことになりました。勝った方が優勝というこの大一番は、大阪市長居球技場に満員の観衆を集めました。試合は立命館が先行し、関西学院が追う展開となります。関西学院が立命館のミスに乗じてFGで得点を重ね、試合終盤にRB前島純選手のTDで逆転に成功しますが、立命館はQB東野選手からWR芝原譲選手へのロングパスによるTDで再逆転。17対13で勝利し、創部41年目にして初のリーグ優勝を飾りました。この1994年から1996年にかけての関立戦は、プレーオフを含め立命館が6勝2敗と優位に進め、関西学院は3年連続で優勝争いから一歩後退する形となりました。

関西学院の巻き返し（1997-2001）

3年連続で甲子園ボウル出場を逃していた関西学院が、1997年に見事な復活を遂げます。第5節の全勝対決、事実上の優勝決定戦となった関立戦で、関西学院はQB高橋公一選手を中心とした自在な攻撃で立命館守備を翻弄し、16対7で勝利しました。続く関京戦にも勝利し、4年ぶりに甲子園ボウルへ出場します。一方、立命館はRB樫野選手のラン攻撃が封じられ、苦戦を強いられました。

しかし、1998年の最終節で実現した関立戦では、優勝候補の京都大学を破って全勝で臨んだ立命館が、後半にR里見選手のキックオフリターンTDをきっかけに勢いを取り戻し、RB杉山選手らのラン攻撃で逆転勝利を収め、2度目の甲子園ボウル出場を決めました。

1999年、前年の主力選手が多く残る立命館に対し、QB有馬隼人選手を中心に好調を維持していた関西学院が全勝対決で激突。関西学院は序盤にTDで先制し、QB有馬選手の負傷退場後も代わったQB岡村選手が活躍を見せ、27対7で快勝。立命館は守備が関西学院のTフォーメーションからのオプション攻撃に対応できず、ラン攻撃も封じられました。

2000年、立命館は1回生QB高田鉄男選手を中心としたショットガン攻撃で挑みましたが、前年に続きラン攻撃がDL石田力哉選手らの関西学院守備に抑えられ、10対6で敗れました。2001年も2年連続となる全勝対決となりましたが、立命館のショットガン攻撃は封じられ、関西学院がインターセプトからのチャンスを活かしてTDを奪い、10対6で競り勝ちました。

1997年以降の関立戦は常に優勝の行方を左右する重要な一戦となり、この頃から伝統の関京戦を超える注目を集めるようになりました。関西学院が立命館のラン攻撃を封じて勝利する試合が多く、これが立命館が2002年からパス攻撃を重視したショットガン攻撃（通称リッツガン）を本格導入する契機となります。また、試合終盤の攻撃が実らない立命館に対し、チャンスを確実に得点に繋げる関西学院の試合巧者ぶりが目立ちました。関西学院はこの時期、1999年から2001年までリーグ3連覇を達成し、2001年度には主将DL/LB石田力哉選手らを擁して悲願のライスボウル制覇を果たしています。

立命館の反転攻勢と激戦の時代（2002-2005）

2002年、立命館は3年間遠ざかっていた甲子園ボウルを目指し、平井英嗣氏が総監督、古橋由一郎氏がヘッドコーチという新体制でシーズンに臨みます。3年目を迎えたショットガン攻撃はQB高田鉄男選手を中心に精度と破壊力が飛躍的に向上していました。一方、主力選手が卒業した関西学院は苦戦を強いられ、リーグ終盤の関立戦を迎えます。この試合で立命館はQB高田選手からFL木下典明選手へのロングパスTDを皮切りに猛攻を仕掛け、48対14で関西学院に大勝します。この48失点と34点差は、当時の関西学院にとってリーグ戦史上最多失点・最多得点差敗戦という記録的な敗北でした。立命館はこの年、甲子園ボウル・ライスボウルも制し、前年の関西学院に続いて日本一に輝きました。

2003年も多くの主力が残った立命館は優勝候補筆頭と目され、安定した戦いぶりでリーグ優勝を決め、最終節の関立戦に引き分け以上で甲子園ボウル出場が決まる状況で臨みました。関西学院は苦しいシーズンで優勝の可能性は途絶えていましたが、QB河野順選手を中心とした攻撃で序盤にリードを奪います。下馬評を覆す展開でしたが、立命館は4QにQB高田選手からTDパス、さらに2ポイントコンバージョンを成功させて同点に追いつき、試合終了間際にK岸野選手がFGを決めて24対21で逆転勝利を収めました。立命館はこの後も日本一連覇を果たしますが、この関立戦が年間で最も苦しい一戦でした。

2004年、QB高田鉄男選手らを始めとする主力が卒業した立命館と、QB河野順選手を中心としたラン攻撃が定着した関西学院は互角の戦いが予想されました。第5節の全勝対決は事実上の優勝決定戦となり、点の取り合いの末、関西学院が30対28で勝利します。しかし、関西学院が次節で思わぬ敗北を喫したため、6年ぶりに両校優勝となり、プレーオフにもつれ込みました。雨中のプレーオフは、関西学院が先制するも立命館が追いつき、延長にもつれ込む激戦となります。最終的に立命館が24対21で勝利し、甲子園ボウル出場を決めました。

2005年、両校は安定した戦いぶりで勝ち進み、リーグ優勝の行方を最終節の全勝対決で決める初のケースが実現しました。会場の西京極陸上競技場には22,000人を超える観衆が集まりました。序盤はインターセプトが飛び交う展開でしたが、立命館が徐々にペースを掴みTDで先制。関西学院も追い上げ1点差に迫りますが、逆転を狙った2ポイントコンバージョンが失敗します。その後立命館が突き放しますが、関西学院も試合終盤にTDで再び2点差に迫ります。プレーオフに望みを繋ぐため、関西学院は再び2ポイントコンバージョンを選択しましたが、ランプレーはわずかに届かず、立命館が17対15で勝利しました。立命館は4年連続のリーグ制覇を果たし、一方の関西学院は、最上級生が一度も甲子園ボウルに出場せずに卒業するという異例の事態となりました。

関立戦の現状

1996年に京都大学が優勝して以降、関西大学が61年ぶりに優勝した2009年度を除き、リーグの優勝はほぼ関西学院大学と立命館大学のどちらかが獲得しており、関立戦がリーグ優勝の行方を左右する最も重要な試合として位置づけられています。リーグ戦における観客動員数も常に最多であり、リーグを代表する看板カードとなっています。各メディアもこの対戦に大きな注目を寄せ、報道が集中する傾向にあります。

試合の焦点

長らく関立戦の戦術的な焦点は、立命館大学のラン攻撃を関西学院大学の守備がどう抑え込むかにありました。1997年以降、立命館はショートパス主体の戦術も試みましたが、成功しませんでした。しかし、2002年にオクラホマ大学の戦術を取り入れたショットガン攻撃（リッツガン）を導入すると状況は変化します。この攻撃は、攻撃ラインの間隔を広げることでランプレーも効果的に機能させることが可能となり、パスとランのバランスの取れた攻撃を実現しました。関西学院は立命館の強力になったパス攻撃を警戒しつつ、ラン攻撃も抑える必要が生じ、立命館攻撃が優位な状況を作り出し、2002年から4年連続でリーグ制覇を達成しました。

その後も両校は互いに戦術を磨き合い、拮抗した実力でリーグのトップを争っています。関立戦は、単なる一試合を超え、関西学生アメリカンフットボールの歴史と進化を象徴する対戦であり続けています。

もう一度検索