闘いの挽歌

『闘いの挽歌』（英題：Trojan）は、日本のゲームメーカーであるカプコンが開発し、1986年4月にアーケードゲームとして稼働を開始した横スクロール形式のアクションゲームです。その後、同年12月24日にはファミリーコンピュータ（ファミコン）版が登場したほか、北米向けにはPC/AT互換機|PC_AT互換機版も発売されました。アーケード版や移植版は、後年の家庭用ゲーム機向けソフトに収録される形で提供も行われています。

ゲームシステム

プレイヤーは主人公「リュウ」を操作し、画面の左右から現れる敵を倒しながらステージを進んでいきます。操作は8方向レバーに加えて二つのボタンを使用します。リュウが武器である剣を構えている時は、一方のボタンで剣を振る攻撃、もう一方で盾を構える防御を行います。しかし、敵の特定の攻撃を受けるなどして武器を失い素手状態になると、ボタンの機能はそれぞれパンチとキックに切り替わります。

ゲームは全6ステージで構成されており、これらを2回繰り返すことで合計12ステージをクリアすることになります。各ステージの最後にはボスキャラクターが待ち受けており、これを打ち破ることで次のステージへと進めます。キャラクターのグラフィックは当時のゲームとしては大きめに描かれていました。ステージ自体に複雑なギミックは少なく、主な脅威は襲い来る敵キャラクターからの攻撃に集約されています。攻撃手段は基本的に剣によるものですが、防御に用いる盾も特定の攻撃に対しては効果がありません。

プレイヤーの体力はゲージ制で、ダメージを受けると減少します。体力を回復するには、ステージクリア時か、時折出現する翼の生えたハートのアイテムを取得するしかありません。体力が尽きるか、あるいは制限時間を超えてしまうと1ミスとなります。3回のミスでゲームオーバーとなりますが、コンティニュー機能が搭載されており、ゲームオーバーになった時点から再開することが可能です。

ストーリー

ゲームの舞台は、核戦争によって世界が荒廃した世紀末です。この世界は、強大な力を持つ剣王率いる悪の軍団によって支配され、人々は彼らの横暴に怯えながらの日々を送っていました。しかし、あらゆる武術を極めた一人の若者、リュウは、苦しむ人々からの依頼を受け、平和を取り戻すために悪の軍団との戦いに身を投じる決意をします。

ステージとキャラクター

ゲームには、荒廃した街の跡、険しい岩山、ビル内部の様々なフロア、そして古めかしい宮殿といった、特徴的な6つのステージが登場します。

主人公のリュウの行く手を阻むのは、多種多様な敵キャラクターたちです。通常の雑魚敵は、ハンマーで襲いかかるスマッシャー、ナイフや特殊なボールを投げるスラッシュ、マンホールや岩場からボーガンで狙撃するロードダイバーやレッドアロー、ビルからダイナマイトを投下するボンバーマン、空中から爆弾を落とすスカイジャイロなどがいます。これらの多くは比較的簡単に倒せますが、一部には複数の攻撃を当てないと倒せない敵や、通常のジャンプでは攻撃が届かない高い場所にいる敵も存在します。

各ステージの最後に立ちはだかるボスキャラクターには、斧使いのマムシ、伸縮する義手を持つアイアンアーム、丸まり攻撃や火炎弾を使うアルマジロン、跳躍力が高く棘の玉を投げるゴブリン、ガード不能の棍棒を持つマッスラー、そしてリュウに似た剣技を使うトロージャンがいます。最終ステージでは、悪の軍団を率いる剣王アキレスが最後の敵として登場します。ボスキャラクターは、ゲームエンディング後に紹介される演出があります。

移植版の特徴（ファミリーコンピュータ版）

特にファミリーコンピュータ版は、アーケード版とは異なる多くの独自の要素が追加されています。例えば、アーケード版にはない隠し部屋が存在し、ここには多くのパワーアップアイテムが隠されていますが、同時に敵が出現することもあります。また、アーケード版には登場しないファミコン版オリジナルの敵キャラクターとして、沼から襲いかかるキラーフィッシュやバーバリアン、そして最終ボスであるアキレスとの戦いの直前に現れるボスキャラクター、キングスリークが追加されました。キングスリークは、登場時に壁を破壊しながら瓦礫を飛ばすという印象的な演出を持ち、飛ばされた瓦礫にも攻撃判定があります。

一部のボスキャラクターの表現や攻撃方法も変更されています。マムシは覆面を着用し、アイアンアームの義手は飛び道具として機能します。最終ボスのアルキメデスは、戦いの前にマントを脱ぎ捨てる演出が加わり、戦闘時のみ長剣を使用します。体力回復アイテム以外にも、様々なパワーアップアイテムが登場するようになりました。また、ゲームの周回要素は廃止され、6ステージクリアでエンディングとなります。コンティニューの方法もゲームオーバー後に特定のコマンドを入力する形式に変更されました。さらに、主人公リュウとボスキャラクターのトロージャンが戦う対戦モード「VSモード」が追加され、対人戦を楽しむことも可能となりました。

ファミコン版の発売時にはテレビCMが放映され、追加されたキングスリークの登場シーンなどが印象的に使われました。このCMのナレーションは声優の山田康雄氏が担当しています。初期に製造された特定のファミコン本体では正常に起動しない不具合があり、カセットの回収がアナウンスされる出来事もありました。

その他の情報と評価

PlayStation 2版などに移植された際には、ジャンプ操作を含む3ボタンでの操作に対応するなど、プラットフォームに合わせた調整が行われています。

当時の評価としては、アーケード版はゲーメストムック『ザ・ベストゲーム2』で「秀作ゲーム」に選ばれており、特にボタンによるガード操作という斬新なアイデアや、高い難易度ながらも熱中度が高い点が評価されました。ファミコン版はゲーム誌『ファミコン通信』のクロスレビューで28点（40点満点中）を獲得。「暗くジメジメした世界観」や「難易度が高いが面白い」といった感想が寄せられています。

本作は、後のカプコン作品『NAMCO x CAPCOM』に、シルフィーの技名としてその名が登場するなど、一部で関連が見られます。開発には、後に名作を手がける多くのスタッフが携わっていました。

『闘いの挽歌』は、硬派なアクションと独特の世界観、そして特にファミコン版での豊富な追加要素により、当時のプレイヤーに強い印象を残した作品と言えるでしょう。

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