阪之上家住宅

阪之上家住宅：和洋折衷の美を湛える歴史的建造物

大阪府堺市西区浜寺昭和町に位置する阪之上家住宅は、国の登録有形文化財に指定されている歴史的建造物です。大正期から昭和初期にかけて建てられた複数の建物から成り立ち、和洋折衷の建築様式が特徴です。敷地内には、洋館、離れ座敷、蔵、外塀、そしてそれらを繋ぐ渡廊下などがあり、それぞれの建物が調和して独特の景観を醸し出しています。

洋館：浜寺ホテルの設計を受け継ぐ

洋館は、煉瓦造り二階建てで、建築面積は37㎡とコンパクトながらも存在感があります。1921年頃、計画段階で実現しなかった浜寺ホテルの設計の一部が流用されたとされており、その歴史的経緯も興味深い点です。ファサードは柱型をパラペットまで通す特徴的な構成となっており、洗練されたデザインが見て取れます。

離れ座敷：伝統的な和の空間

1934年建築の木造平屋建ての離れ座敷は、建築面積107㎡と広々とした空間です。瓦葺き寄棟造りの屋根を持つ伝統的な日本の建築様式が採用されています。床の間、棚、書院を備えた座敷を中心に、茶室が設けられており、落ち着きのある和の空間を演出しています。

蔵：洋館との調和

同じく1934年建築の蔵は、木造二階建て、瓦葺切妻造りで、建築面積は20㎡です。桁行3間、梁間2間という伝統的な間取りで、街路側には洋館の柱型意匠に合わせたバットレスが見られます。和と洋の建築様式の融合が、この蔵にも表れています。

外塀と渡廊下：敷地全体の構成を支える

門柱を含めて延長19mに及ぶ外塀は、敷地全体を囲み、プライバシーを守りながら、景観に品格を与えています。木造の渡廊下は、かつての主屋と離れ座敷を繋ぐ連絡通路として機能しており、敷地内の各建物の繋がりを象徴する存在です。

文化財としての価値

1999年、洋館、離れ座敷、外塀、蔵、渡廊下の全てが国の登録有形文化財に登録されました。これは、阪之上家住宅が歴史的・建築的に貴重な建造物であることを示しています。それぞれの建物の建築様式、素材、構造、そしてそれらが織りなす景観は、日本の近代建築史を理解する上で重要な資料となっています。

アクセスと周辺環境

阪之上家住宅は、南海本線浜寺公園駅から徒歩5分とアクセスも良好です。周辺には近江岸家住宅や小倉家住宅など、歴史的な建造物が多く存在しており、歴史散策の拠点としても最適な場所と言えるでしょう。ただし、現在、一般公開はされていませんので、見学を希望する場合は事前に確認が必要です。

まとめ

阪之上家住宅は、大正から昭和初期にかけての建築様式を見事に融合させた歴史的建造物です。和と洋の調和、そしてそれぞれの建物の細部に至るまでの工夫は、建築史研究においても高い価値を持ちます。訪れる際には、その歴史と建築美をじっくりと味わいたいものです。

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