阪急500形電車 (2代)

阪急500形電車の概要

阪急500形電車は、かつて阪神急行電鉄及び京阪神急行電鉄に所属していた小型の通勤形電車です。1938年から1943年にかけて31両が製造され、先に登場した380形の増備車として、宝塚線の輸送力増強を目的に開発されました。このモデルは、沿線の宅地化が進行する中で、通勤需要の増加に対応するために設計されたのです。

登場の背景

阪急宝塚線では、1926年に51形を用いた3両編成が導入され、1941年からは池田駅発着列車の4両編成化が行われました。しかし、51形の車両はやや小型で力不足で、これに代わり新たな車両の導入が求められました。その結果、500形が誕生し、宝塚線の輸送力向上に貢献することとなりました。

製造と変更点

500形は、320形および380形の後継車両として1938年に最初の12両が製造され、1940年と1943年にはそれぞれ追加の車両が川崎車輌で製造されました。基本的なデザインは380形を踏襲していますが、片運転台の広幅貫通路を特徴としています。このデザインは、当時の宝塚線の橋梁に合わせて荷重負担を考慮した結果、1両にモーターを2基搭載する編成となりました。

技術的特徴

全鋼製の軽量構造であり、車体長は約15m、車体重量は20.4tとなっています。窓配置はd1(1)D6D(1)2で、平帯のウインドシルに電気溶接が多用されています。また、運転台側に行先表示幕、助手席側に尾灯が設置されており、妻面には広幅の貫通路が設けられています。屋根には押込型ベンチレータが装備され、座席はパイプ式袖仕切のロングシートです。

台車は住友金属工業製の鋳鋼台車を採用し、主電動機は初期型では芝浦製作所製の新造品が搭載され、その後の車両では他社製モーターが使用されました。ブレーキシステムも進化し、戦時中にはA型動作弁を採用した自動空気ブレーキが導入されました。

運用の歴史

500形は宝塚線や箕面線で使用され、急行から普通まで幅広い運用をこなしました。しかし、その出力は164kWであり、当時の他の電車と比較すると不足気味のため、急勾配区間では苦しい走行を強いられることが多かったのです。また、戦時体制下においても適応しつつ、他の路線への転出や輸送力増強などの変遷がありました。1945年以降は、神戸線や今津線などでの運用も行われ、戦後は再び宝塚線での運用が始まりました。

晩年と後の運用

1960年代後半には、新しい電車へと置き換えられることが決まり、500形の多くは運用から外れました。広島電鉄や能勢電鉄へと譲渡された車両もあり、広島の1070形や能勢電鉄での運用が続けられましたが、最終的には1986年にすべての車両が運用を終了しました。この優れた小型電車は、多くの人々に愛され続け、鉄道ファンの間でもその存在は今でも語り継がれています。

もう一度検索