阪急810系電車

阪急810系電車について

阪急810系電車は、京阪神急行電鉄（後の阪急電鉄）でかつて運行されていた通勤形電車です。1950年から1954年にかけて、ナニワ工機によって26両が製造されました。この車両は、主に神戸線と宝塚線で運用される大型の通勤電車として設計されており、810形、814形、818形の3つの型式に分類されます。

車体の特徴

810系は、京都線用の710系と共に阪急標準の車体寸法を確立しました。その全長は約19,000mm、幅は2,750mmであり、当時の半急電車の中では最大規模の規格です。特に宝塚線では、この車両の運行に合わせて線路規格が向上されました。810系のデザインは710系と同様ですが、細部で差異が見られ、たとえば標識灯の配置や窓枠の塗装方法が異なっています。

主な機器と性能

810系の電装品は東京芝浦電気製で、4台の主電動機（170kW、750V）を搭載しています。810形は、神戸線と京都線間の直通特急サービス向上のため、複電圧車として設計されており、架線電圧600Vと1500Vに対応しています。座席はクロスシートで、台車にイコライザー台車のKS-33（H-147）を採用しており、ブレーキシステムはAMA及びACAが使用されています。ただし、他の車両との併結はできません。

814形は、1952年に宝塚線用に投入された600V専用の大型車両で、性能の違いから独自に区分されています。座席はロングシートで、ゲルリッツ式のFS-103台車を使用しています。818形も神戸線用に増備されたもので、基本的な設計は814形と同様ですが、いくつかのデザイン上の変更が加えられています。

改造と運用

810系は運用開始後、大きな改造は行われませんでしたが、1967年には神戸線、1969年には宝塚線での昇圧に伴い、1500V専用としての改造が施されました。同時に、長編成対応のためブレーキが電磁直通ブレーキに改造され、一部車両では運転台が撤去され、固定編成が組まれました。1971年から1973年には全車の3扉化が実施され、その後も車両改造は続けられました。

1975年以降、810系は主に支線運用に使われ、今津線では6両編成、伊丹線では4両編成、甲陽線では2両編成として利用されました。

1985年3月3日には、810系のさよなら運転が行われ、多くのファンに見送られました。

廃車と保存

810系の廃車は1983年に始まり、1985年3月に全車が廃車されました。その中でも820の前頭部は保存され、また810自体は後に個人宅に譲渡されることとなりました。これにより、810系は名実ともにその幕を閉じることになりました。今回はこの車両が果たした役割と、その魅力に迫ってみました。

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