阪神5131形・5331形電車

阪神5131形・5331形電車は、かつて阪神電気鉄道で運用されていた通勤形電車（ジェットカー）です。1981年に登場し、主に各駅停車として活躍しました。この車両は、普通用車両の量産車としては初めて電機子チョッパ制御を採用したことが大きな特徴です。制御装置のメーカーの違いにより、5131形と5331形の2形式に分かれていました。

概要

1980年から1981年にかけて、5151形および5311形の冷房改造が行われましたが、その際、制御装置を回生ブレーキ付きの電機子チョッパ制御として実用試験も実施されました。試験の結果、駅間距離が短く、頻繁に発車・停車を繰り返す阪神本線の普通運用において、30%を超える高い省エネ効果が確認されました。これにより、制御装置の初期コストを考慮しても、電力回生量と力行電力の節減による経済効果が高いことが明らかになりました。

この結果を受けて、当時唯一の非冷房車であった5231形を置き換えるため、電機子チョッパ制御装置を搭載した新型車両が導入されることになりました。1981年から1983年にかけて、5131形14両、5331形10両の合計24両が製造され、5231形の置き換えが完了したことで、阪神の旅客車両はすべて冷房車となりました。

形式は制御器のメーカーによって区別されており、5131形は東芝製、5331形は三菱電機製の制御装置を搭載していました。阪神の社内では、形式名よりも「東芝（チョッパ）」・「三菱（チョッパ）」という愛称が一般的でした。

構造

車体

車体は、先に製造された抵抗制御車の5001形（2代）と同一のものが採用されました。車内はロングシートが配置され、薄緑色の格子柄の化粧板など、他の普通系車両と共通のデザインでした。

主要機器

台車は、住友金属工業製のペデスタル式コイルばね台車FS-343が装着されました。主電動機は、東洋電機製造製のTDK-814-B（出力75kW/300V）が4基搭載されました。これらの主要機器は、5231形の廃車発生品が再利用されました。

制御装置は、回生ブレーキ・抑速ブレーキ付きの電機子チョッパ制御を採用しており、5131形は東芝製BS-470-A、5331形は三菱電機製CFM-108-15-RHを搭載しました。

ブレーキは、回生ブレーキを併用する電磁直通ブレーキ（HSC-R）で、抑速ブレーキも装備していました。補助電源装置は、出力75kVAのCLG-346形電動発電機を、空気圧縮機は当初よりC-2000-M形を搭載していました（5335のみC-2000-L (LA) を搭載）。

回生制動を行うため、2両ユニットの各車両にパンタグラフが搭載されました。パンタグラフは下枠交差式で、全車両とも運転台側に設置されました。冷房装置は、分散式冷房装置のMAU-13HAを6基搭載していました。

改造工事

4両固定編成化

1987年12月のダイヤ改正で、普通運用の終日4両編成化が実施されたことに伴い、ジェットカー各形式は基本的に同形式で4両編成を組むことになりました。翌1988年から、5001形と同様に4両固定編成化改造が行われました。

中間車に組み込まれる先頭車は、運転台の撤去と客室への改造が行われ、簡易運転台が設置されました。奇数番号車はパンタグラフを撤去し、撤去跡に冷房装置を増設しました。偶数番号車のうち、神戸方先頭車のパンタグラフ搭載位置を連結面側に変更し、同時に冷房装置の位置も入れ替えました。5131形・5331形は、同形式同士で4両編成を組むと2両ずつ余るため、最終増備車の5143-5144と5339-5340の2編成で混成4両編成を組成しました。

前面は貫通幌と桟板が撤去され、幌枠のあった部分にステンレス製の飾り板が設けられました。前面・側面に行先表示器が設置されました。車体側のジャンパ栓は撤去されましたが、床下のジャンパ栓は存置されました。

1989年以降に改造された車両は、乗務員室の冷房化のため、先頭車最前部の冷房装置がCU-10Hに交換されました。

保全工事

震災復旧後の1996年から、5001形と同様に保全工事が開始されました。中間車の神戸方の座席を2名分撤去し、車椅子スペースが設置されました。また、ドアエンジンの交換も行われました。初期に4両編成化を施工した車両は、先頭車最前部の冷房装置をCU-10Hに換装しました。

阪神・淡路大震災

1995年 1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、本形式のうち3編成12両が被災しました。5335Fは被災後、一部車両が廃車となり、他の編成と組み替えが行われました。

運用

本形式は、本線および西大阪線の普通運用に投入され、他の形式と共通運用されていました。1983年には5231形を置き換え、阪神の営業用車両の100%冷房化を達成しました。

廃車

5143・5144は2010年に、5335Fは2015年に、5331Fは2017年に廃車されました。最後に残った5131Fも2019年に廃車され、形式消滅となりました。電機子チョッパ制御に使用する部品の調達が困難になったことや、台車の老朽化が、廃車の理由として挙げられます。

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