防人の詩

防人の詩

概要

「防人の詩」は、さだまさしが1980年に発売した12枚目のシングルです。この楽曲は映画『二百三高地』の主題歌として作られ、発売後には65万枚のセールスを記録しました。さだが映画音楽監督の山本直純からの依頼を受けて制作されたこの曲は、戦争の勝敗を超えた人間の営みを歌った作品です。

制作の背景

映画『二百三高地』において、山本直純はさだまさしに主題歌の制作を依頼しました。さだは映画のテーマを理解するため、「勝った、万歳を描く歌を書くのですか？」と問いかけましたが、山本は「そうではなく、戦争の勝負を超えた人間のささやかな営みを描きたい」と答えました。このような会話から、さだは曲の制作に取り組むことになりました。

しかし、さだは当初、歌詞の制作に苦労しました。彼の映画『翔べイカロスの翼』のロケ現場に山本のマネージャーが訪れ、急遽第1番を制作しました。時間がないため、応急的にカセットテープに吹き込んで渡しました。その後、追加の歌詞が求められることになり、同じメロディーの繰り返しで新たに3番を作成しました。この結果、さだの曲は映画の中で挿入歌としてフルコーラスで流され、特に尺をこなすために特別なシーンが追加されました。

歌詞のインスピレーション

「防人の詩」の歌詞は『万葉集』第16巻の詩からインスパイアを受けています。この古典作品の中にある「海は死にますか、山は死にますか。死にます。だが、潮は引き、山は枯れゆく」といったテーマは、戦争と人間の営みに共通するものです。この歌詞の深みが、作品の本質をより際立たせています。

デビューと評価

「防人の詩」は、シングル発売と同時期に1979年のNHKで放送されたライブコンサートで初めて披露されました。この時点では歌詞は3番までしか完成していませんでしたが、その後に4番が追加されました。また、1980年末の第31回NHK紅白歌合戦でさだはこの曲を歌い上げ、その影響力を世に示しました。「防人の詩」は、戦争への批判や賛美とも解釈され、主題歌を作成したさだ自身も「右翼」と批判される一幕もありました。しかし、文芸評論家の山本健吉が擁護し、日本の詩歌の伝統を尊重した作品であることが再評価されることになります。

他の収録曲

シングルには「とてもちいさなまち」も含まれ、故郷や愛する人についての思いを表現した作品です。この曲もまた、さだの後のベストアルバムに再収録され、彼の音楽の幅広いテーマを証明しています。

カヴァーアーティスト

「防人の詩」はさまざまなアーティストによってカヴァーされ、青木隆治や秋川雅史などがその名を連ねています。英語でのカヴァーも存在し、多国籍な魅力を持つ楽曲としても広がりを見せています。

結論

「防人の詩」は、さだまさしの代表作として、戦争の影を映し出しつつも、人々の営みを大切にするメッセージを伝える美しい歌です。発表から40年以上経った今でも、多くの人に愛され続けています。

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