山本健吉

山本健吉（やまもと けんきち）

日本の文芸評論界における重要な存在、山本健吉は1907年4月26日に長崎市で生まれ、本名は石橋貞吉です。彼は俳句批評を出発点として、古典的な文学作品から現代文学まで幅広く探求し、独自の視点から文芸批評を展開しました。山本は昭和を代表する文芸評論家の一人とされ、日本芸術院会員や文化勲章受章者としても知られています。著作には『現代俳句』や『古典と現代文学』、さらには近年評価が高まった『いのちとかたち』などがあります。

来歴

山本は伝説的な文芸評論家、石橋忍月の三男として長崎市で生を受けました。彼は旧制長崎中学を経て慶應義塾大学国文科に進学し、折口信夫に師事しました。日本の古典詩歌に深く精通し、古典と現代の文学作品の相互関係についての研究を重ねました。特に彼は、現代文学の分析において「第三の新人」という用語を初めて使用し、文学界に大きな影響を与えました。

1929年、山本は藪秀野と結婚し、一人娘の安見が生まれます。この時期、二人は日本共産党に関与し、特高警察によって一か月近く拘留されるという経験もありました。彼は1933年に改造社に入社し、翌年に創刊された「俳句研究」において現代俳句の深化を図りました。

1939年には、「俳句研究」の座談会で「人間探求派」という概念が生まれ、さらに同年に吉田健一らと「批評」誌を創刊し、私小説に関する議論を行いました。戦時中は同人誌の統合が進む中、堀田善衛との交流も果たしました。

1943年には初の評論集である『私小説作家論』を発刊し、その後は「島根新聞」や「京都日日新聞」の文化部長としても活躍しました。1948年からは角川書店で編集長を務め、当時の文芸界において重要な役割を果たしました。

山本は、40代まで辛い経済状況にありましたが戦後の文芸界では大変多様な分野で活動し続け、著述を生涯にわたって展開しました。1967年から1978年には明治大学で教授を務め、また1972年には日本文藝家協会の理事長、後に会長としても活動しました。

受賞歴

彼の文芸世界への貢献は、多くの受賞歴に表れています。1949年には『三田文学』に掲載された作品で第1回戸川秋骨賞を受賞し、1955年には『芭蕉』で新潮社文学賞を得るなど、数多くの文学賞に輝いています。

また、1966年には日本芸術院賞を受賞し、1972年には『最新俳句歳時記』で再び読売文学賞を受賞、同年に勲三等旭日中綬章も授与されました。その後も彼は数々の文学的栄誉を受け、1981年には文化功労者に選ばれました。

人物像

山本の文学観は、彼自身の家系にも影響を受けています。彼の父、石橋忍月は著名な批評家であり、文学に対する深い理解を受け継いでいました。山本はその伝統を引き継ぎつつ、現代の感性を融合させて批評を行いました。また、個人的な面では、彼は俳句の世界に多くの影響を与え、文化の発展にも尽力しました。1988年に急性呼吸不全で亡くなりましたが、彼の業績は今なお評価され続けています。

著作

彼の著作は多岐にわたり、『私小説作家論』、そして『現代俳句』の全2巻など多くの名著があります。特に、宮中歌会始で召人となる名誉を持つなど、名誉ある地位でも知られています。1995年には彼の名字を冠した文庫が設立され、遺品が集められました。彼の智恵と情熱は、日本文学に永遠の影響を与え続けています。

まとめ

山本健吉は、文芸評論の世界で独自の地位を築いた著名な評論家である。彼の探求心と批評眼は、古典から現代文学に至るまで、幅広い知識と理解を持っていました。彼の意志と情熱は、後世の文筆家たちに引き継がれ、今もなお文学界に影響を与えています。

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