真綿

真綿とは

真綿は、蚕の繭を煮て引き伸ばして綿状にしたものです。日本では、木綿が普及する以前は「綿（わた）」といえば、この真綿を指していました。

真綿の製法

真綿は、生糸にできない品質の繭を、アルカリ性の薬品で精錬し、水洗いした後に、水中や手で広げて伸ばし、不純物を取り除いて作られます。均一に広げた真綿を木枠に張り付けて乾燥させたものが「角真綿」と呼ばれます。その他にも、製法の違いによって「袋真綿」や「ひじ掛け真綿」などがあります。

真綿の特徴と利用

真綿は、白く光沢があり、柔らかく、保温性に優れているのが特徴です。古くから布団や綿帽子、防寒着の中綿として使用されてきました。また、そのまま服の間に挟んで使用する（背負い真綿）こともあります。良質な真綿は、紬の原料としても利用されます。

真綿の歴史

日本の歴史においても、真綿に関する記述は古く、『続日本紀』には、8世紀初頭に、地方の民が米俵の代わりに真綿を調として納めたという記録があります。また、渤海への贈り物としても用いられていたことが記されており、古代から交易品として用いられていたことがわかります。

中世には、戦乱の影響で生糸を作る技術が失われ、養蚕は真綿の生産が中心となりました。江戸時代に入ると、木綿栽培が普及し、生糸の生産技術も復興したため、真綿の生産は衰退しました。しかし、現在でも滋賀県、福島県、長野県などで機械生産が行われており、紬や布団などに加工されています。また近年では、中国などからの輸入も増えています。

その他の利用法

真綿は、特殊な用途として、忍者の偽装術にも用いられていました。縁の下などに侵入する際、蜘蛛の巣を破り、別の方向に逃げ、そこに真綿の糸を張ることで、追手を欺くというものです。暗闇の中では、真綿の糸でも蜘蛛の巣に十分偽装できたとされています。

真綿は、日本の伝統的な素材であり、その製法や用途は、長い歴史の中で培われてきました。現代でも、その優れた特性から、様々な形で利用されています。

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