阿保藩

アボ藩の概要

阿保藩（あぼはん）は、徳川家康が関東に入国した際に、現在の群馬県にあたる上野国に設けられた藩です。この藩は、重臣である菅沼定盈に1万石が与えられる形で成立しましたが、関ヶ原の戦いを経て、彼の子である定仍が別の地へ移封されたことにより、わずか10年ほどで廃藩となりました。そのため、阿保藩の実態は不明確であり、現在も議論が続いています。

阿保藩の歴史

歴史は天正18年（1590年）に遡ります。この年、家康は関東に入国し、重臣を重要な場所に配置する「関東知行割」を実施しました。菅沼定盈はその中で1万石を与えられ、「上野国阿保」と称される封地を得ます。文献に記載されたこの場所に関しては異なる説がありますが、具体的な所在地が特定されていません。

定盈は慶長の初期に家督を定仍に譲り、間もなく定仍は関ヶ原の戦いに参加して、その功績により1万石の加増を受け、合計2万石まで昇格し伊勢長島藩に移されたために、阿保藩は自然と廃止となったのです。

阿保の所在地

阿保の場所について、文献による記述が複数存在します。『寛政重修諸家譜』や『菅沼家譜』では上野国阿保とされており、また『徳川実紀』でも「下野阿保」との記載がありますが、これはおそらく誤記と考えられています。さらには『藩翰譜』には上野国の阿布と記載があり、残念ながらその所在地は謎のままです。

一説では、武蔵国賀美郡の元阿保村（現在の埼玉県児玉郡神川町）であるとの見解があり、郷土史家の長谷川典明は1989年にこの結論に達しました。元阿保村自体は江戸時代には賀美郡に属し、明治29年の郡の改編にともない、児玉郡に編入されました。文献によれば、元阿保村は元々「安保村」と呼ばれていたことが記されていますが、近隣に「安保町」があるため、「元」が付けられたと言われています。

業績と影響

武蔵国に属する元阿保は、地域の交通の要所であり、昔から武士である丹党安保氏の拠点でもありました。この顕著な歴史的背景が、後の藩の配置に影響したと考えると、阿保藩の成立やその短命さには、地域の歴史が大きな影響を与えていることが伺えます。元阿保については、戦国時代にも安保氏が勢力を持ち、地元の重要な地として認識されていました。

また、菅沼定盈が元阿保村に留まっていた期間も記されており、当時の文化や生活がここでどのように営まれていたかを推測するための貴重な資料があります。

阿保藩主

阿保藩の藩主には菅沼家が名を連ね、1万石を受け持ちました。歴代藩主としては定盈と定仍の二人が主だった人物です。彼らは徳川家康の関東入国時における重要な役割を担っていたため、歴史的にも重要な位置づけがあります。

このように、阿保藩は短期間の存在でしたが、歴史的背景において多くの興味深い要素をもつ藩であったことがわかります。地域の歴史と結びついたその実態は、未だに多くの研究の対象となっています。

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