阿刀田高

阿刀田 高 - 日本の小説家

阿刀田高（あとうだ たかし）は、1935年に東京で生まれた日本の小説家です。彼は特に短編小説とミステリー小説の領域でその名を知られ、「奇妙な味」といった作品が多くの読者に親しまれています。日本推理作家協会の会長や、日本ペンクラブの会長を歴任した他、文化功労者にも認定されています。

彼の経歴は非常に興味深く、出生時は双子だったものの、弟は早世してしまいます。父は鋳物工場を経営し、その影響で少年時代は新潟県長岡市で過ごしました。戦後、東京に上京し東京都立西高等学校から早稲田大学へ進む際、父を失ったことが彼の人生の大きな分岐点となりました。最初は理系を志望していたものの、文学に興味を持ち直し、最終的にはフランス文学専攻を選びます。

大学卒業後、国立国会図書館の司書として働く一方で、執筆活動を開始。1964年に古今東西の殺し文句に関する随筆を発表し、これが新聞に取り上げられ、作家としての第一歩を踏み出すこととなります。1972年に図書館の仕事を辞めてからは、作家一本の生活を送ることにしました。

1978年には短編集『冷蔵庫より愛をこめて』が直木賞候補に、続いて1979年には短編『来訪者』で日本推理作家協会賞を受賞。また、同年『ナポレオン狂』で直木賞も受賞し、文壇での地位を確立しました。以降も、彼はミステリーやブラックユーモアをテーマにした短編を数多く執筆し、作家としての実力を伸ばしていきました。

彼の作品はミステリーやユーモアが強く特徴付けられ、800を超える短編を手がけているといわれています。特に星新一の影響を受けたショートショートの名手としても知られ、多様なジャンルにわたる作品群で楽しませてくれます。また、『ギリシア神話を知っていますか』などのエッセイ作品や、古典の解説も行い、文学的な視点を広げる試みを続けています。

阿刀田高は受賞歴が豊富で、1995年には『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞し、文化庁文化審議会の会長や、直木賞選考委員としても活躍しました。2003年には紫綬褒章、2009年には旭日中綬章を受け、2018年には文化功労者に選出されています。現在も新田次郎文学賞や小説すばる新人賞の選考委員を務めるなど、精力的に活動を続けています。

彼の代表作には『闇彦』や『佐保姫伝説』などがあり、それぞれが独自の視点から語られています。悪の側面や人間の心理を描くことで、読者に深い思索を促す作品が多いのが特徴です。

阿刀田高は現在も多くの人々に影響を与える作家として、多彩な作品を通じて読者に寄り添っています。彼の創作活動や社会貢献は、今後も日本文学の発展に寄与していくことでしょう。

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