阿天坊俊明

阿天坊 俊明（あてんぼう としあき）氏は、1948年1月27日に千葉県銚子市に生まれ、日本の野球界において高校、大学、社会人とその才能を発揮した元社会人野球選手であり、引退後は実業家として郷里に貢献している人物です。

高校野球における輝かしい経歴

阿天坊氏は、地元の名門である銚子商業高校に進学し、野球部で内野手として活躍しました。特に遊撃手としてチーム守備の要を担い、打者としても三番の重責を任されました。彼の高校時代における最も特筆すべき出来事は、1965年の夏に迎えた甲子園での快進撃です。エースである同期の木樽正明投手と共にチームを牽引し、第47回全国高等学校野球選手権大会に出場。木樽投手の安定したピッチングと堅い守備、そして打線の活躍により順調に勝ち進みました。準決勝では、エース牧憲二郎投手を擁する高鍋高校との手に汗握る接戦となりましたが、9回裏に土壇場でサヨナラ勝ちを収め、決勝進出という歴史的な快挙を成し遂げました。決勝戦の相手は三池工業高校でした。しかし、三池工業の上田卓三投手の前に打線が封じ込められ、0対2で惜しくも敗れ、全国準優勝という輝かしい成績を残しました。夏の甲子園での雪辱を果たすかのように、同年秋に開催された岐阜国民体育大会では、決勝で岐阜短大付属高校と対戦。相手エース淵上澄雄投手から打ち崩し、見事に優勝旗を勝ち取り、全国制覇を達成しました。

この高校での目覚ましい活躍は多くのプロ球団の注目を集め、同年秋に行われた第1回プロ野球ドラフト会議では、南海ホークスから2位という高い順位で指名を受けました。しかし、阿天坊氏はプロ野球への道を選ばず、大学で野球を続けることを決意しました。

大学野球、そして東京六大学での栄光

高校卒業後、阿天坊氏は野球の名門として知られる立教大学に進学しました。東京六大学野球リーグというレベルの高い舞台に身を置き、その実力をさらに磨きました。大学に入学して間もない1966年の春季リーグから、彼は二番打者として早々とレギュラーポジションを獲得しました。このシーズン、立教大学は槌田誠、谷木恭平、秋山重雄といった錚々たるメンバーと共に、阿天坊氏の貢献もあって7年ぶりとなるリーグ優勝を飾りました。彼はその後もチームの中心打者として活躍を続けましたが、チーム全体としては優勝から遠ざかる低迷期に入り、再び栄冠を手にすることは叶いませんでした。大学での同期には、後にプロの世界へ進む服部敏和（中退）のほか、中沢春雄、土井池憲治といった顔ぶれがいました。

社会人野球での経験

立教大学を卒業した阿天坊氏は、社会人野球の名門である新日本製鐵室蘭に入社し、硬式野球部でプレーを続けました。社会人野球の最高峰である都市対抗野球大会にも出場しています。1970年には、北海道地区の強豪である大昭和製紙北海道の補強選手として都市対抗に出場。二塁手、五番打者としてチームに加わり、安打を放つなどの活躍を見せましたが、チームは2回戦でサッポロビールに敗れました。この試合では、後にプロ野球のヤクルトスワローズで活躍する牧重見投手に抑えられました。翌1971年には、所属チームである新日本製鐵室蘭が3年ぶりに都市対抗本大会への出場権を獲得しました。この大会では、大学時代の先輩である谷木恭平氏と共にクリーンアップを組み、四番打者、遊撃手としてチームを牽引しましたが、残念ながら1回戦で三協精機に敗れ、大会を終えました。

野球引退後の新たな道

社会人野球選手としてのキャリアに区切りをつけた後、阿天坊氏は生まれ育った千葉県銚子市へと帰郷しました。家業である干物商を引き継ぐことを決意し、「干物工房・あてんぼう」の代表取締役として、新たな人生のスタートを切りました。経営者としての手腕を発揮する傍ら、野球への深い愛情を持ち続け、地元の野球振興にも積極的に関わっています。特に、シニア世代の野球チームである「銚子シニア」では会長を務めるなど、地域における野球の普及や後進の育成に貢献しています。

阿天坊俊明氏の半生は、高校時代の甲子園での準優勝や国体優勝、大学でのリーグ優勝といった選手としての栄光、そして社会人野球での挑戦を経て、故郷での事業継承と地域への貢献へと続いています。内野手として確かな技術とリーダーシップを発揮した経験は、引退後の実業家としての活動や、地元野球への貢献にも活かされていると言えるでしょう。その多才なキャリアは、多くの人々に影響を与えています。

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