服部敏和

服部 敏和（はっとり としかず）氏は、1948年2月13日に静岡県清水市（現在の静岡市清水区）で生まれた元プロ野球選手です。彼は、捕手を除く内外野の全てのポジションを守ることができる、まさに「ユーティリティプレイヤー」として球界で知られました。その守備範囲の広さと器用さは、所属したチームにとって欠かせない存在となりました。

アマチュア時代

服部氏の野球人生は、地元の静岡高校で始まりました。高校時代からその才能は開花し、1年生だった1963年の夏には、左翼手としてチームメイトの小田義人氏らと共に夏の甲子園に出場。惜しくも2回戦で敗れましたが、全国の舞台を経験しました。さらに、3年生となった1965年春の選抜高等学校野球大会にも出場。この大会では中堅手としてプレーし、チームは準々決勝まで駒を進めましたが、平松政次投手を擁する岡山東商業高校に敗れ、甲子園での頂点には届きませんでした。高校の同期には、小田氏の他に佐藤竹秀氏がいます。

高校卒業後、服部氏は立教大学に進学しました。東京六大学野球リーグでは、1年生からすぐにレギュラー外野手として定着し、チームの中心選手として活躍。1966年春季リーグでは、チームの優勝にも貢献しました。しかし、彼は大学を2年で中退するという決断を下し、社会人野球の名門である日本楽器（現在のヤマハ）に入社しました。社会人野球では主に1番打者としてチームを牽引し、1968年の大阪大会では1試合で2本塁打を放つなど、長打力も見せつけました。この年、産業別対抗野球大会にも出場しています。

プロ入り

社会人での活躍が認められ、1968年のプロ野球ドラフト会議において、近鉄バファローズから10位指名を受け入団しました。プロ入り後、服部氏はその多才な守備力を遺憾なく発揮します。1969年には、若手選手の登竜門であるジュニアオールスターゲームに出場するなど、将来を嘱望されました。

1970年になると、一軍に本格的に定着。主にチャンスメーカーとして打線を繋ぎながら、三塁手や外野手として71試合に先発出場しました。1973年には外野手に専念し、規定打席には到達しなかったものの、打率.321という高打率をマークするなど、打撃面でも高い能力を示しました。翌1974年には、前年まで二塁手を守っていたジム・クォルス選手の退団に伴い、二塁手へとコンバートされます。このように、彼の守備の柔軟性は、チームの様々なニーズに対応するために活かされました。

日本ハム時代

1975年のシーズンオフ、服部氏は大きな転機を迎えます。永淵洋三氏、市橋秀彦氏と共に、阪本敏三氏、八重沢憲一氏との交換トレードで日本ハムファイターズへ移籍しました。日本ハムでは主に外野手の準レギュラーとして、チームの戦力として長く貢献しました。ここでも内外野をこなすユーティリティ性を発揮し、チームの状況に応じて様々なポジションを守りました。

彼のプロ野球人生におけるハイライトの一つとして、1981年の読売ジャイアンツとの日本シリーズが挙げられます。特に、第1戦の舞台で、同点で迎えた9回裏、服部氏は中前打を放ち出塁。その後、代打で登場した井上弘昭氏がサヨナラ安打を放つと、二塁から一気に本塁へ生還し、チームに劇的な勝利をもたらしました。このシーンは、彼の勝負強さと走塁能力を示すものとして記憶されています。

現役引退とその後

服部氏は1982年限りで、14年間のプロ野球生活にピリオドを打ち、現役を引退しました。現役生活を通じて、彼は守備のスペシャリストとして、そして様々なポジションを守れる貴重な存在としてチームに貢献しました。1980年8月6日には、プロ野球史上218人目となる1000試合出場を達成しています。

引退後は、野球界を離れ、株式会社石原機械工業に勤務しました。

彼のプロ野球選手としての背番号は、近鉄時代には45番（1969年-1971年）と23番（1972年-1975年）を、日本ハム時代には2番（1976年-1978年）と28番（1979年-1982年）を着用しました。

服部敏和氏は、その卓越したユーティリティ性で、パシフィック・リーグにおいて長きにわたり活躍した選手として、プロ野球史にその名を刻んでいます。

もう一度検索