阿母河等処行尚書省

阿母河等処行尚書省

「阿母河等処行尚書省」またはアム河行省は、モンゴル帝国が設置したイランにおける統治機関です。この機関の起源は第2代皇帝オゴデイの時代にさかのぼり、モンゴルのイランに対する統治努力の結果として成立しました。名称が正式に与えられたのは第4代皇帝モンケの時期で、モンゴル軍のイランへの侵攻が背景にあります。

イラン総督府の成立と背景

1219年から1222年にかけて、モンゴル軍はホラズムに大規模な侵攻を行い、広範囲にわたって中央アジアや西北イランを征服しました。この侵攻により、各地にダルガチが配置され、間接的な統治体制が敷かれました。特に、ホラーサーン州においては、治安が悪化し、統治が行き届かない状況が続いていました。この状況を改善するため、オゴデイの指導のもと、チョルマグン率いる軍隊が派遣されることとなりました。

この軍隊を支援するために、チン・テムルがホラーサーン州に派遣され、そこには多くのホラズム人の行政官が同行しました。彼らは、のちにイラン総督府の原型となる組織を形成します。

初代総督チン・テムルの統治

チン・テムルがホラーサーンに到着した当初、そこは治安が極めて悪化しており、大きな混乱が発生していました。彼は迅速に行動を起こし、オゴデイからの指示を受ける前に独力で問題の解決にあたりました。彼の行動により、ホラーサーン州の改善が見られ、カラコルム中央政府からも正式に認められることになりました。これにより、イラン総督府は実質的に成立したといえるでしょう。

チン・テムルは、ホラズムのシャラフッディーン・ホラズミーを大ビチクチ、バハーウッディーンを財務長官に任命し、これらの措置によりモンゴル勢力による徴税が開始されました。この結果、イラン地域内でのモンゴル人の地位が大きく変わることとなります。

第2代総督ノサルと第3代総督クルクズの時代

チン・テムルの死後、ノサルが第2代総督に任命されますが、彼の高齢と健康状態から実質的な統治は困難でした。そのため、同時期にジョチ家から出向してきたクルクズが実務を担当しました。彼は有力者の支持を得て、成功を収めますが、その後も政治的な対立が続き、混乱が生じました。

クルクズは最終的に政敵によって告発され、裁判にかけられ、処刑されるという悲劇的な結末を迎えます。

第4代総督アルグンの背景

アルグンが総督に任命されると、彼はイラン全域において新たな領土の統治に力を入れました。しかし、内部対立が続き、彼は数度カラコルムに赴くなどの困難な状況に直面しました。最終的に彼は、モンゴル帝国の権力争いの中で、イランの命運を左右する役割を果たします。

機構と特徴

イラン総督府は、時代背景や地域の特性を反映した機構を持っていました。カーンから直接任命されたモンゴル人総督、現地で活動する書記官、各王家からの派遣官が統治を支えるという構成です。この組織は、現地の要望やカラコルムの意向が相互に影響し合いながら運営されました。

特にイラン総督府の設置にあたっては、現地の官僚がカラコルムとつながりを持とうとした意図が見え隠れし、ボトムアップな運営が特長的と言えます。イラン総督府は、地域における様々な統治課題に対処し、一時的には繁栄を見せたものの、内外の政治的圧力によりその運営は困難を極めました。

歴代の総督

• - チン・テムル
• - ノサル
• - クルクズ
• - アルグン・アカ

このような背景を探ることで、モンゴル帝国のイランにおける統治機関の実態やその影響を理解する手助けとなるでしょう。

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