阿波志

『阿波志』について

『阿波志』は、江戸時代の徳島藩によって作成された地誌であり、徳島県の歴史や地理に関する重要な情報源です。これは、11代藩主蜂須賀治昭の指示の下、お抱えの儒学者佐野山陰によって編纂されました。1792年に編纂が始まり、1815年には全12巻の形で完成しました。

編纂の経緯

徳島藩の編纂の作業は、佐野山陰が寛政5年（1793年）に、藩内の町や村に関する調査を行うことでスタートしました。各地の官吏や庄屋に協力を求め、地元の地理、歴史、人口、農耕関連の情報が精力的に集められました。さらに、佐野は寛政10年（1798年）には自ら各地を巡り、追加の資料収集にも取り組みました。このような詳細な調査の結果が後に『阿波志』としてまとめられたのです。

内容と構成

『阿波志』は、阿波国の郡ごとに分かれ、各巻では土地に関連する情報、地誌、寺社、城址、地域の著名人などが記録されています。全巻が漢文で記されており、簡潔にまとめられているため、読みやすさも考慮されています。具体的な構成は以下の通りです：

• - 巻01 - 阿波国総説
• - 巻02 - 城府（徳島城下）
• - 巻03 - 板野郡
• - 巻04 - 阿波郡
• - 巻05 - 美馬郡
• - 巻06 - 三好郡
• - 巻07 - 麻植郡
• - 巻08 - 名東郡
• - 巻09 - 名西郡
• - 巻10 - 勝浦郡
• - 巻11 - 那賀郡
• - 巻12 - 海部郡

このように、地域ごとの情報が整理された形で提供されており、歴史的な価値が高いとされています。

複数の写本

『阿波志』には、複数の保存版が存在します。後藤家本（蜂須賀文庫）は、徳島城博物館に所蔵されている貴重な文化財であり、他にも呉郷文庫本や昭和6年に刊行された活字本『阿波誌』があります。これらの写本は、いずれも異なる時期に作成されており、さまざまな側面から『阿波志』の内容を知ることができる資料です。

評価と影響

『阿波志』が編纂された当時、徳島藩は財政的に厳しい状況にあり、農村経営の改善を図るための手段としてこの地誌が編纂されたとされています。これにより、地域住民の生活環境や経済活動に対する理解も深まり、さまざまな改革が施行されるきっかけとなりました。

『異本阿波志』

同時期には、編者が不明な『異本阿波志』という別の地誌も存在しました。この書物は、『阿波志』とは異なる側面から徳島の歴史や文化を記録しており、特に徳島城下町の成立に関して重要な情報が含まれています。成立時期についてのメモもいくつか存在し、特に宝暦期に成立したとする説や、寛政期に記されたものとされる説があります。

まとめ

『阿波志』は単なる地図やガイドにとどまらず、徳島の歴史と文化を深く知るための貴重な文献です。地域の特性や背景を理解するための資料として、今もなお広く閲覧されています。

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