蜂須賀治昭

蜂須賀治昭：文化を愛した阿波徳島藩主

蜂須賀治昭（はちすか はるあき）は、宝暦7年（1758年）に阿波国徳島藩の第10代藩主・蜂須賀重喜の長男として生まれました。幼名を千松丸と名乗り、後に父から偏諱を賜り喜昭と称しました。明和6年（1769年）に父の隠居により家督を相続し、第11代藩主となります。

藩主としての治世

藩主となった当初は、父の失政の影響で出仕を一時とどめられました。しかし、翌年には赦免され、従四位下阿波守に叙任。将軍・徳川家治から偏諱を賜り、治昭と改名しました。藩主としては、文化振興に力を注ぎました。文化3年（1806年）には、藩祖・蜂須賀家政を祀る國瑞彦神社を建立。また、寛政4年（1792年）には地誌「阿波志」の編纂を命じ、文化12年（1815年）に完成を見ました。

大名屈指の蔵書家

治昭は、蔵書家としても知られていました。その蔵書数は6万巻に及んだとされ、足代弘訓は「書物ありきは聖堂なり、次は浅草・守村次郎兵衛の十万巻、次は阿波の国・蜂須賀治昭の六万巻、次は塙氏六万巻ばかりあり」と記しています。数代にわたり蜂須賀家が収集した典籍は「阿波国文庫」と呼ばれ、貴重な文化遺産として後世に伝えられています。阿波国文庫には、国学者・屋代弘賢が所有していた不忍文庫も収蔵されました。

隠居と死去

文化10年（1813年）に治昭は隠居し、次男の斉昌に家督を譲りました。文化11年（1814年）に58歳で死去しています。

家族

父: 蜂須賀重喜
母: 伝姫（立花貞俶の四女）
正室: 俊姫（井伊直幸の娘）
側室: 高野恭、辻備

多くの子女に恵まれましたが、中でも次男の蜂須賀斉昌が跡を継ぎました。

阿波国文庫と「阿波志」

治昭の時代に充実した阿波国文庫は、江戸時代の学術・文化の発展に大きく貢献しました。「阿波志」は、治昭の命によって編纂された地誌であり、当時の阿波国の地理、歴史、文化を知る上で貴重な資料となっています。編纂には、儒学者の柴野栗山も関わりました。

東洲斎写楽との関連性

治昭の時代には、謎の浮世絵師・東洲斎写楽が登場しました。写楽の正体については諸説ありますが、阿波のお抱え能役者斎藤十郎兵衛とする説が有力です。もしこの説が正しければ、治昭の文化政策が写楽の才能を開花させたとも言えるでしょう。

蜂須賀治昭は、藩政においては父の失政からの立て直しを図りつつ、文化人としての才能を発揮し、阿波国の文化振興に大きく貢献しました。その功績は、阿波国文庫や「阿波志」といった形で今もなお息づいています。

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