阿波沖海戦

阿波沖海戦（あわおきかいせん）

阿波沖海戦は、慶応4年1月4日（1868年1月28日）に勃発した戊辰戦争における戦闘の一つであり、日本史上初めて蒸気機関を装備した近代軍艦同士が戦った海戦として知られています。別名、兵庫沖海戦とも呼ばれます。

同時期に起こった鳥羽・伏見の戦いとは異なり、旧幕府軍側が勝利を収めた戦いではありますが、旧幕府軍はその後江戸へ撤退したため、結果として近畿地方の制海権は薩長を中心とする新政府軍側の手に渡ることとなりました。

海戦の背景

鳥羽・伏見の戦いが始まった慶応4年1月3日、薩摩藩の軍艦である春日丸、運送船の翔凰丸、平運丸が兵庫港に停泊し、鹿児島への帰還準備を進めていました。一方、旧幕府海軍の軍艦頭であった榎本武揚が率いる開陽丸は、大阪湾に停泊し、海上から鳥羽・伏見の戦いの状況を注視していました。

海戦の経過

1月4日の早朝、平運丸は明石海峡へ、春日丸と翔凰丸は紀淡海峡へ向けて出港しました。これを発見した開陽丸は、停船命令として空砲を発射しましたが、薩摩藩の艦船はこれを無視。直ちに臨戦態勢に入った開陽丸は、春日丸と翔凰丸を追撃し、両艦に対し計25発の砲撃を加えました。これに対し、春日丸も18発の砲弾を開陽丸に向けて発射しましたが、双方ともに大きな損害を受けるには至りませんでした。

春日丸は元々帰還を目的としていたため、戦闘を継続することなく、速力の優位性を活かして鹿児島へと逃れました。しかし、途中で機関が故障した翔凰丸は、由岐浦の岸に座礁。拿捕されることを恐れた乗組員によって自焼処分となりました。この翔凰丸の最期を見た榎本武揚は、「敵ながらあっぱれ」と賞賛したと伝えられています。

海戦の結果と影響

この海戦による死傷者は、双方ともに出ませんでした。しかし、兵庫港からの出港時、春日丸と平運丸が衝突し、春日丸は船体に損傷を負いました。当時、国内には大型船を修理できる施設がなかったため、薩摩藩は慶応4年4月3日付で新政府に対し、大型船用のドックがある上海での修理を申請。英国商人に修理を委託し、春日丸は上海へと送られることとなりました。

また、薩摩藩の乗組員が一時上陸した徳島県美波町の由岐漁港は、現在「阿波沖海戦小公園」として整備され、歴史を伝える場となっています。

参考文献

保谷徹『戦争の日本史18　戊辰戦争』吉川弘文館、2007年、ISBN 978-4642063289

関連項目

鳥羽・伏見の戦い

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