阿莘王

阿莘王 - 百済の王

阿莘王（あしんおう、生年不詳 - 405年）は、百済の第17代の王として392年から405年まで在位しました。彼は第15代王である枕流王の長男であり、父が385年に亡くなった際、まだ幼かったため、叔父である辰斯王が16代の王位を継承しました。しかし、辰斯王が392年11月に死去すると、阿莘王が王位に就くことになります。

即位の経緯

阿莘王の即位については敵国高句麗との間で多くのドラマがありました。『日本書紀』に記されているところによれば、辰斯王が王位を簒奪したとされ、日本側からこの行為に対する譴責がなされると、百済では辰斯王を殺害して阿莘王を新たに王として立てたとされています。このため、阿莘王の王位継承には紆余曲折があったと見られています。

治世の特徴

即位直後、阿莘王は392年10月、高句麗に奪われた関彌城の奪回を目指しました。彼は勇猛な真武（王妃の父）を左将に任命し、393年8月には1万の兵を率いて高句麗を攻撃しようとしましたが、敵の籠城により失敗、撤退せざるを得ませんでした。さらに翌年も高句麗と戦って敗北し、396年には好太王が漢山城まで侵攻してくる事態となりました。この結果、阿莘王は高句麗に服属することを誓わされましたが、彼は同時に倭国との修好を模索し、太子を倭国に人質として送る対応をしました。こうした背反する外交は、当時の百済の苦境を物語っています。

その後の高句麗との戦争は劣勢が続き、399年には高句麗討伐のための徴発が厳しくなり、百済民の中から新羅に逃れる者が増加しました。同年、倭国が新羅侵攻を開始するなど、国際情勢はさらに厳しさを増していきました。特に『好太王碑文』には399年以降、倭国の侵攻が活発化していたことが記され、百済は新羅に敵対することで新たな困難を迎えることとなりました。

また、阿莘王は402年5月には倭国への使者を派遣し、403年2月には倭国からの使者を特に手厚くもてなした記録が残されています。この時期、百済と倭国との交渉が頻繁に行われていたことが示されていますが、日本側にはこの件に関する具体的な記録が見当たりません。特に、人質として送られた太子が腹心の地位にあったことも影響し、王子の帰国前に内部の争いが激化する要因ともなりました。

症状により、阿莘王は405年9月に死去し、彼が在位していた14年間の間に百済は様々な苦難と対立を経験しました。太子がその後腆支王として即位するまでの間、兄弟間で内乱が発生し、国政は混乱を極めました。

参考文献・脚注

• - 金富軾撰、井上秀雄訳注『三国史記』第2巻、平凡社
• - 武田幸男編『朝鮮史』山川出版社
• - 伴信友校訂、岸田吟香他『日本書紀』

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