阿蘇長陽大橋

阿蘇長陽大橋の詳細解説

阿蘇長陽大橋は、熊本県阿蘇郡南阿蘇村に位置し、黒川に架かる村道栃木-立野線の一部を担う重要な橋梁です。全長276.0メートルを誇り、PC4径間連続ラーメン箱桁橋という構造形式を採用しています。この橋は、深い谷を跨ぐように建設され、その構造的な特徴と、歴史的背景から地域のインフラを支える上で重要な役割を果たしています。

構造

阿蘇長陽大橋は、4径間連続のラーメン橋であり、深い谷間に3本の壁式中空橋脚を配置しています。支間長はそれぞれ、39.3メートル、91.0メートル、91.0メートル、53.3メートルとなっており、中央の第2橋脚は基礎から桁下まで73メートルの高さを有しています。この構造により、谷を安全に横断することが可能となっています。

歴史

阿蘇長陽大橋の建設は、立野ダムの建設計画と深く関連しています。ダム建設に必要な資材輸送や、基礎掘削で発生した土砂を運搬するために、立野ダム工事用道路の第2工区が建設され、その一環として黒川を跨ぐ橋が必要となり、阿蘇長陽大橋が架設されました。開通は1997年（平成9年）3月21日です。

この橋の建設以前には、付近には九十九折の坂道を通って渓谷に降り、短い橋で川を渡って再び上る旧道が存在していました。この旧道にあった黒川橋は、1900年（明治33年）に架設された全長25.3メートルの石造アーチ橋でしたが、阿蘇長陽大橋の開通により、渓谷を迂回することなく容易に横断できるようになり、旧道は閉鎖されました。残念ながら、旧黒川橋は平成24年7月九州北部豪雨の際に流失してしまいました。

2005年（平成17年）1月には、橋の脇の公園に与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑が設置されました。これは、1918年（大正7年）に夫妻がこの地を訪れた際に詠まれた歌が刻まれたもので、長陽村が南阿蘇村に合併することを記念して建てられました。歌碑は高さ60センチメートル、幅165センチメートルの安山岩でできています。

2016年（平成28年）の熊本地震では、阿蘇長陽大橋そのものは崩落を免れたものの、西側の橋台が崩落、東側の橋台が水平移動するなどの大きな被害を受けました。また、橋に続く道路も損傷し、通行が困難な状況となりました。同じ地震で、約1キロメートル上流にある国道325号の阿蘇大橋も落橋したため、南阿蘇村の立野地区から村役場へのアクセスは、俵山トンネルを経由する大回りが必要となり、住民の生活に大きな影響を与えました。

災害復旧のため、国が代行して復旧工事を進めた結果、2017年8月27日に再開通し、立野地区から村役場までの所要時間は従来の40分から10分に、熊本インターチェンジから南阿蘇村役場までも60分から35分へと大幅に短縮されました。

その後、阿蘇大橋の復旧工事が進んだことで、阿蘇長陽大橋の隣にある戸下大橋の仮復旧部分を本復旧するために、2021年（令和3年）5月10日から阿蘇長陽大橋を含む区間が通行止めとなり、本復旧工事が実施されました。そして、2022年（令和4年）3月11日に工事が完了し、再開通しました。

阿蘇長陽大橋は、その建設から現在に至るまで、地域の交通を支え続けており、災害からの復興を象徴する重要な橋梁となっています。

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