阿部定

阿部 定（あべ さだ）

阿部定は、1905年に東京で生まれ、1936年に発生した「阿部定事件」で知られる女性です。彼女は愛人を殺害し、その遺体を切断して持ち去るという衝撃的な犯罪を犯しました。この事件は日本の社会に大きな影響を与え、定の人生も複雑なものとなりました。

生い立ちと成長

阿部定は、裕福な家庭に生まれ育ちました。彼女の父は畳屋「相模屋」の経営者であり、母はその家を守っていました。家庭内では、両親から特に甘やかされて育ったことにより、定は少々見栄っ張りで高慢な性格に育ちました。6人兄弟の末娘でしたが、兄姉は幼い年齢で亡くなるなどし、育つ過程で家族との関わりが薄かった時期もありました。定は幼少期から三味線や常磐津を習い、周囲からは美少女として知られていましたが、家庭内のトラブルや自身の心の病にも悩まされました。

青年期と芸妓時代

高等小学校を中退し、早くから不良少女として名を馳せた定は、周囲との問題で家から追い出される形で芸妓の道へ進みました。17歳で売られた定は、夜の世界での生活を始め、名を変えながら幾つかの店で働きました。しかし、恋愛やセックスについてのトラウマを抱えながらの生活は、常に苦悩と隣り合わせでした。彼女は芸妓としての存在感がありながらも、その道での辛さや男性への反発を抱いていました。

娼妓と愛人生活

その後、阿部定は高級娼婦や妾としても活動し、特に情事を伴う関係が絶えず続きました。多くの男性と関わりながらも、その中では愛を求め、心の安定を求めるものの、常に翻弄され続けました。こうした中で、阿部はある名古屋市議会議員・大宮五郎との交際を通じて、彼の教えもあり普通の生活を望むようになり、職に就こうとしました。

阿部定事件の発生と逮捕

しかし、彼女の運命は1936年のある日、大きく変わります。定は不倫相手であった吉田屋の店主・石田との間にトラブルを抱えており、感情の行き違いから彼を絞殺し、その後の行動も衝撃的でした。彼女は遺体の一部を切断し持ち去るという猟奇的な行為に出ました。この事件は瞬く間に社会の耳目を集め、捕まった後も注目の的となりました。

裁判と服役

その後の裁判で、定は精神的な問題もあるとされたものの、結局懲役6年の判決が下されました。逮捕後、収監される間に、定は多くの手紙や結婚の申し出を受け取り、その独特の存在はさらに多くの関心を集めました。彼女はさまざまな思想書を読み、精神的な安定を求めようとしました。

出所後の生活と失踪

1941年に解放された後、新たな名前を名乗りながら生活を続けましたが、彼女の過去は常に影を落としていました。多くの人々が彼女に関心を寄せ、事件の噂が広がる中、定は次第に周囲との関係を持ちつつも孤独を抱えていきました。最後には定は突然失踪し、その後の行方は不明なままとなります。

結論

阿部定の人生は、様々な側面から注目されています。彼女の事件は単なる猟奇的犯罪以上の意味を持ち、社会や精神の影響について考察させる材料となっています。彼女の過去やその影響を抱えながら、どのように生きていったのかは、今もなお人々の記憶に残っています。

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