阿部将翁

阿部 将翁について

阿部将翁（あべしょうおう、生年不詳 - 宝暦3年1月26日）は、江戸時代に活躍した著名な本草家です。彼は、通称として友之進や名を照任または輝任と呼ばれていました。本草学に関して非常に実践的で知識が豊富であった一方、著作をほとんど残さなかったため、その生涯に関しては多くの憶測が存在します。

出身と経歴

将翁が生まれた場所については諸説あるものの、新渡戸仙岳の記述によれば、彼は盛岡藩の閉伊通豊間根村（現在の岩手県山田町）出身で、豊間根一族の出身とされています。その後、延宝年間に大坂に向かう船が台風で難破し、清国に漂流したとされる説があります。この際に清国で医術や本草学を学び、帰国後にその知識を活かすことになります。

他にも、密航して清国に渡ったという説や、長崎で清国人やオランダ人から本草学を学んだという話も存在しますが、具体的な証拠はありません。彼の本草学に対する深い理解は、後の業績にも大きく影響を与えました。

採薬使としての活動

享保6年（1721年）、将翁は幕府に雇われて採薬使として任命されました。これは薬草の採取を目的とした役職であり、彼は野呂元丈らとの共に各地に出向いて採薬旅行を行い、多くの貴重な薬草を発見しました。特に、享保12年（1727年）には陸奥国釜石の仙人峠で磁鉄鉱を発見し、この発見をきっかけに釜石鉱山が開かれることとなりました。

彼は「採薬使記」や「御薬草御用勤書覚」といった記録を残し、当時の本草学に貴重な情報を提供しました。また、幕府に命じられ薬園を開設し、その監督を務めました。この薬園では、対馬藩から献上された朝鮮人参の生根や種子からの栽培に成功し、薬草学の発展に寄与しました。

彼の弟子とその影響

阿部将翁には弟子として田村藍水がいます。田村は将翁から学んだ知識を引き継ぎ、さらに発展させたことで、将翁の業績は次世代に受け継がれていきました。将翁の功績は高く評価されており、彼は大正13年（1924年）には正五位を追贈されました。

まとめ

阿部将翁は、江戸時代において本草学の重要な人物の一人として歴史に名を刻んでいます。彼の廣範囲におよぶ知識と取り組みは、薬草学の発展に大きく寄与し、多くの後進に影響を与えました。その実績は、今でも多くの人々に記憶されています。

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