田村藍水

田村藍水（たむららんすい）は、1718年（享保3年）に生まれ、1776年5月10日（安永5年3月23日）に没した江戸時代中期の医師であり、著名な本草学者です。本姓は坂上氏、諱は登、字は元台、通称は元雄、そして藍水と号しました。彼には、田村西湖や栗本丹洲といった息子がいます。

藍水は江戸の神田で生まれ、15歳で医師である父から医学を学び始めました。その後、阿部将翁に師事し、本草学を深く追求しました。特に朝鮮人参に関心を抱き、1737年（元文2年）には幕府から朝鮮人参の種子20粒を授与され、国産化の研究を命じられました。この命を受け、藍水は朝鮮人参の栽培研究に励むとともに、日本各地を巡り、様々な産物の調査を行いました。

1757年（宝暦7年）には、弟子の平賀源内らとともに湯島で薬品会を開催し、日本の本草学発展に大きく貢献しました。彼の調査は実地を重視し、その姿勢は学者だけでなく、島津重豪や細川重賢といった大名との交流にもつながりました。1763年（宝暦13年）には、人参栽培と諸国物産調査の功績が認められ、一介の町医者から幕府医官に任じられ、200石の禄を賜りました。藍水は朝鮮人参のみならず、甘藷や木綿の研究にも取り組み、その栽培技術の普及にも尽力しました。

藍水の門下からは、平賀源内、中川淳庵、曽占春など、後に名を成す多くの人材が輩出されました。彼は『人参譜』、『人参耕作記』、『中山伝信録物産考』、『琉球物産誌』など、多くの著作を遺しました。これらの著作は、当時の本草学研究において貴重な資料となっています。藍水は江戸で病死し、その墓は現在も真龍寺に存在しています。

田村藍水の生涯は、実地調査を重視した本草学研究の模範であり、江戸時代の医学と産業の発展に大きく貢献しました。彼の功績は、今日においても高く評価されています。

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