阿部成宏

阿部成宏（あべ なりひろ）は、1947年3月27日に岩手県で生まれた元プロ野球選手です。左投げ左打ちの選手で、投手としてキャリアをスタートさせ、後に外野手として主に活躍しました。プロ入り当初の登録名は阿部成行（あべ なりゆき）でしたが、1971年からは阿部成宏に改名しました。実兄の阿部雄厚氏もまたプロ野球選手でした。

岩手県の花巻商業高校（現在の花巻東高校）に進学した阿部成宏は、野球部でエース投手としてだけでなく、四番打者としてもチームの中心を担いました。1964年の夏には、チームを牽引し全国高等学校野球選手権大会に出場を果たします。大会1回戦では鹿児島玉龍高校を相手に完封勝利を収めるなど、投打にわたる才能を発揮しました。しかし、2回戦ではその年の優勝校である高知高校と対戦することになり、相手エースである光内数喜投手の前に打線が抑え込まれ、惜しくも敗退しました。

高校卒業後の1965年、大洋ホエールズに投手として入団。プロの世界で実績を積むことを目指しましたが、分厚い選手層に阻まれ、一軍での登板機会は多くありませんでした。1969年にわずか2試合に登板したものの、目立った結果を残すことはできませんでした。

プロ野球界の大きな転換期となった1970年11月、初の試みとして開催されたトレード会議（第1回選抜会議）の対象選手リストに阿部の名前が挙がりました。その結果、同年12月には読売ジャイアンツへの移籍が決まります。巨人では、プロ入り当初から評価されていた打撃センスと、投手として培った強肩、そして俊足を見込まれ、1971年から本格的に外野手へと転向することになります。このコンバートは彼のキャリアにとって大きな転機となり、転向1年目の1971年には、二軍であるイースタン・リーグで打率.403という驚異的な高打率を記録し、首位打者のタイトルを獲得しました。

巨人でも一軍での出場機会は限られ、1972年12月には再びトレード会議（第3回選抜会議）の対象選手となり、今度は大阪近鉄バファローズへの移籍が決定します。近鉄でも外野手としてプレーを続け、ここでもその打撃力をいかんなく発揮。1973年にはウエスタン・リーグで首位打者となり、これにより二軍リーグながら異なるリーグで2度首位打者に輝くという、珍しい実績を残しました。二軍での確かな結果が評価され、1974年にはついに一軍に定着。年間100試合に出場するなど、チームにとって欠かせない存在へと成長しました。そして迎えた1975年シーズンでは、一番打者として、また中堅手のレギュラーポジションを獲得。自身初めて規定打席にも到達し、打率.261（リーグ22位）を記録するなど、近鉄打線の中核を担いました。その後も、レギュラーとして活躍する平野光泰選手にポジションを譲る時期もありましたが、準レギュラーとしてチームを支え続け、長きにわたりその存在感を示しました。

現役生活の終盤には、近鉄がリーグ優勝を果たし、二度にわたりセ・リーグ覇者広島東洋カープと日本シリーズで対戦しました。1979年の日本シリーズでは、6試合に出場。第4戦では一番・中堅として先発出場を果たしましたが、快音は響きませんでした。続く1980年の日本シリーズにも5試合に出場し、代打や守備固めとしてチームに貢献するなど、大舞台での経験も積みました。

1981年シーズン限りで、プロ野球選手としてのキャリアに幕を下ろしました。現役時代は視力が弱かったため、眼鏡をかけてプレーしている姿が印象的で、それが彼のトレードマークともなっていました。大洋、巨人、そして近鉄と球団を渡り歩き、投手から外野手への転向を経て、特に近鉄では打者としてその才能を大きく開花させた選手として、プロ野球史にその名を刻んでいます。

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