阿部雅信

阿部 雅信: 実業家と競馬馬主

阿部雅信（あべ まさのぶ、1910年 - 1981年）は、日本の実業界において卓越した功績を残した実業家である。彼は木材卸業を営む阿部木材工業を創設し、その企業は国内におけるラワン材の主要な供給者となった。また、競馬ファンとしても知られ、数多くの競走馬を所有していた。

生い立ちと経歴

阿部雅信は1910年に徳島県名西郡神山町で生まれ、その出生名は「定雄」であった。彼は幼少期から商才を持ち、尋常小学校を卒業後に東京へ上京し、木材問屋で働き始めた。しかし、奉公先が経営破綻し、1982年には独立を果たした。彼は当時東南アジアから輸入され始めたラワン材に早くから目を付け、事業を進展させていった。

1940年代初頭、ラワン材は公共建築物に必要な重要な資材として需要が高まり、阿部はほぼ独占的にこの材を扱うようになる。これにより、彼は巨額の富を築いた。しかし、1941年には太平洋戦争が勃発し、ラワンの輸入が中止された。阿部はこの時期に内地産の木材に切り替えるが、1950年からは再びラワンの輸入が再開される。

1964年、彼は脳溢血で倒れ、左半身が不自由となり、経営を長男である雅一郎に譲渡することになる。その後は家庭療養をしながら、競馬に情熱を注ぎ続けた。1981年に彼はこの世を去った。

競馬と馬主活動

阿部雅信は1947年から競馬馬主としての活動を始め、競馬界において「菱雅」という屋号を持つ馬主として知られるようになった。専用の厩舎を中山競馬場に建設し、多くの優秀な競走馬を所有した。代表的な馬には、初代ヒシマサルやヒシマサヒデ、ヒシスピード、ヒシヤクシンがあり、これらの馬は数々の重賞競走で活躍した。

所有馬は引退後も手放さず、繁殖用として保有し続けた。特にヒシマサヒデはヒシマサルの子、ヒシスピードはヒシマサヒデの子であり、血統を重視した繁殖が行われた。ヒシマサルは1958年の菊花賞で2着となり、八大競走では最高ポジションを記録した。当時、阿部は家族の繋がりを重んじ、できる限り小野定夫騎手を馬に乗せた。

しかし、晩年には所有馬が増える一方で、経営が圧迫され、オーナー業は厳しい状況に直面した。雅信の死後、長男の雅一郎が馬主の地位を引き継ぎ、全ての所有馬を見直すことにした。その中には、雅信の名のもとに掴んだ馬が230頭以上あった。雅一郎は1991年、アメリカで購入した馬に「ヒシマサル」という名を付け、その馬もまた重賞を勝利した。

まとめ

阿部雅信の人生は、日本の木材業界と競馬界において忘れられない足跡を残した。彼の業績は、実業家としての成功だけでなく、馬主としての情熱や愛情にも表れている。彼の後継者たちもその精神を引き継ぎ、今なお日本の競馬界に影響を与え続けている。

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