院宣

院宣（いんぜん）とは

院宣とは、上皇の命令を伝えるために、院司が奉書の形式で発給する文書のことです。これは、天皇が発する宣旨に相当するもので、院庁下文と比較すると、より私的な性格を持つ文書とされています。

院宣の歴史

院宣に関する記録で最も古いものは、延長7年（927年）の宇多上皇が伊勢神宮に宣旨を下した際、神宮側がその指示を神郡に伝えた「延長七年大神宮勘注」にみられます。この頃から、院宣は重要な文書として認識されていたことがわかります。

『法曹至要抄』には、養老律の解釈を巡り、明法家の先例として「太上天皇宣」の偽造は詔書と同等の罪に当たるとする学説が紹介されています。これは、院宣が早い時期から法的にも重要な文書と認識されていたことを示唆しています。

平安時代後期に院政が始まると、上皇は院宣や院庁下文を通じて自らの政治意思を表明するようになりました。特に、院宣は、天皇の宣旨と同等かそれ以上の権威を持つものとされ、政治における重要な役割を担いました。

院庁下文との違い

院庁下文は、詔勅や太政官符と同様に政府の最終決定を示す文書として扱われ、法的にも同等の効力を持っていました。一方、院宣はより簡易な形式で発給され、効力も柔軟でした。そのため、政府の重要事項については院庁下文が用いられ、より迅速かつ柔軟な対応が必要な場合には院宣が用いられるという使い分けがなされていました。

院宣の権威

院宣は非常に権威のあるものでした。上皇の意向を直接的に示す文書として、政治や社会に大きな影響力を持っていました。しかし、その権威は絶対的なものではなく、時には覆されることもありました。

院宣に関連する出来事

承久の乱では、後鳥羽上皇が院宣を用いて兵を集め、鎌倉幕府を倒そうとしましたが、幕府軍に大敗し、最終的には院宣を正式に取り消す事態となりました。この出来事は、院宣の権威が必ずしも絶対的なものではないことを示す一例と言えるでしょう。

関連事項

• - 太上天皇
• - 太上法皇
• - 院政
• - 承久の乱

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