院家

院家（いんげ）とは

院家とは、寺院を構成する塔頭や、特定の出自を持つ僧侶の身分を指します。この言葉は門跡に次ぐ位置づけとして使われ、特に近世の浄土真宗において重要視されます。

寺院塔頭としての院家

一般的に「院」とも呼ばれる院家は、大寺院内で独立した区域を占有している別院であり、寺院本体とは異なる所領や組織を持つ僧侶たちが住んでいます。本来、寺院の僧侶は共同生活を送ることが基本とされていましたが、自己修行に専念する僧侶が独立した住居を構えることもありました。これが院家の起源となります。

平安時代には、複数の宗派が存在する寺院において、同じ宗派の僧侶が集まり、修行と研究を行うケースも多く見られました。このような宗派ごとの共同生活は、院家としての活動を豊かにしました。

余談ですが、門跡寺院では、院家に属する僧侶が住む塔頭も指すようになりました。

僧侶身分としての院家

院家という身分は、主に皇族や貴族出身の僧侶に関連しています。特に890年に宇多上皇が出家した際には、彼に従った皇族や貴族たちが仁和寺の院家「御室」に参加しました。このため、院家は当初「門跡」と混同されていましたが、次第に独自の位置づけが確立されました。

院家は、その身分によって特別な権利を持ち、既存の院家の資財を背景に新しい院家を創設することが奨励されるようになりました。

寺院の格式としての院家

院家は、宇多天皇の出家に従った皇族が「院家衆」と呼ばれたことに起源を持ちます。その後、親王や貴族が出家し、継承される法系を持つ寺院は院家と呼ばれるようになりました。特に鎌倉時代以降、門跡に付随する由緒正しい寺院としての位置づけが強化されました。

具体的な例として、代表的な院家には延暦寺の青蓮院、興福寺の一乗院・大乗院、醍醐寺の三宝院、南禅寺の金地院、相国寺の鹿苑院などがあります。これらの院家では、皇族や貴族出身の僧侶だけが止住を許される特別な存在でした。

また、院家として新たに門跡寺院に加わった寺院が、自らの別院や末寺を設けることも一般的でした。1560年には本願寺の門跡寺院指定に伴い、摂津富田の教行寺や伊勢長島の願証寺などが院家として認定される事例があります。

このように、院家は単なる僧侶集団としてだけでなく、寺院の格式や身分制度の一部を形成する重要な要素となっています。

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