除田

除田（じょでん）とは

除田とは、中世初期の公田や荘園において、年貢や公事といった税の納入義務を免除された特定の土地を指します。これらの土地は、その免税措置によって、通常の耕地とは異なる役割を担っていました。除田は、単に税を免除された土地というだけでなく、当時の社会構造や経済活動を理解する上で重要な要素となります。

除田の成立背景

中世初期の社会では、農地からの収穫が重要な財源であり、その多くが年貢として徴収されていました。しかし、全ての土地が常に安定して生産できるわけではありませんでした。自然災害やその他の理由により、耕作が困難になった土地や、特定の目的のために利用される土地が存在しました。これらの土地に対して、年貢や公事の徴収を免除することで、土地の有効活用や特定の事業の維持を促進しようとしたのが除田の始まりです。

除田の対象となった土地

除田の対象となった土地は、多岐にわたり、それぞれ異なる役割を持っていました。

常荒田（じょうこうでん）や損田（そんでん）：これらは、災害やその他の原因によって耕作が困難になった土地です。例えば、洪水や干ばつ、土砂崩れなどによって、農作物を育てることが難しくなった土地が該当します。このような土地は、年貢を徴収しても収穫が見込めないため、除田として扱われました。
寺田（じでん）・神田（しんでん）：寺院や神社などの宗教施設が所有する土地です。これらの土地は、寺社における祭祀や宗教活動の経費を賄うために、年貢が免除されました。宗教的な活動の維持を目的とした土地が、除田として保護されていたことがわかります。
荘官（しょうかん）や工匠（こうしょう）などが耕作・管理する土地：荘園の管理者である荘官や、特定の技術を持つ工匠が耕作・管理する土地も、除田の対象となる場合がありました。彼らの労働に対する報酬や、特別な技術を維持するために、税が免除されたと考えられます。
灌漑施設などの維持運営に充てられる土地：農業生産を維持するために不可欠な灌漑施設などの運営に必要な土地も、除田とされました。これらの土地から得られる収益は、施設の維持や修繕に使われ、農業生産の安定に貢献していました。

除田の意義

除田は、単に税を免除された土地というだけでなく、中世社会における土地利用の多様性を示すものでした。災害によって耕作不能になった土地を救済し、宗教活動や特殊技能を持つ人々を保護し、農業インフラを維持するなど、さまざまな目的で活用されていたのです。

除田の存在は、当時の社会が、画一的な土地利用ではなく、多様なニーズに対応するために柔軟な土地管理を行っていたことを示しています。除田を理解することは、中世社会の複雑な構造を把握する上で欠かせない要素となります。

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