陳平 (マレーシア)

マラヤ共産党の指導者、陳平

陳平（チン・ペン、Chén Píng）は、1924年10月21日に生まれ、2013年9月16日に亡くなった、マラヤ共産党の書記長であり、本名は王文華（Ong Boon Hua）である。彼は、中国において策謀家として知られる「陳平」の名を借り、「マラヤの陳平」と呼ばれる、アジア現代史における特異な人物として知られている。

生涯

陳平は、経済的に平均的なマラヤの客家として生まれた。1940年にマラヤ共産党に入党し、抗日武装闘争に参加した。1947年にはマラヤ共産党の書記長に就任し、1948年6月からは抗英武装闘争を指揮した。しかし、1955年の自治政府との和平会談が決裂すると、マレー・タイ国境に潜伏することとなった。彼は幻の軍隊を率いていたとされ、その後長らく表舞台から姿を消していた。

1968年に中国共産党とベトナム共産党が武装闘争重視路線に転換したことを受けて、マラヤ共産党も活動を活発化させた。しかし、1980年代になると、マレーシア政府とマラヤ共産党の関係は、話し合いの段階へと移行し始めた。1989年12月の和平協定によって、陳平の長きにわたる闘争は終焉を迎えることとなった。この協定により、彼は「最後のコミュニスト」とも呼ばれるようになった。

晩年、陳平は亡命先のタイで、故郷への帰還を強く願っていた。しかし、マレーシア国内には陳平による過去の武力闘争を記憶し、傷つけられた人々も多く、反対勢力が存在したため、帰国は実現しなかった。2009年には、タイ政府が旧マラヤ共産党員と同様に陳平の入国を認めるべきと斡旋したが、マレーシア政府と世論は国民感情からこれを拒否した。一方で、政治リアリストであるリー・クアンユーは、陳平を高く評価する発言をしている。

敵対していたイギリスが陳平を叙勲した（後に撤回）一方で、マレーシア国内では、抗日武装闘争におけるマラヤ共産党の役割を評価しない流れが継続している。現在でもマレーシアでは共産党は法律で禁止されている。

2013年9月16日、陳平は癌のためバンコクの病院で亡くなった。享年88歳であった。2019年には、彼の遺灰が祖国に帰還し、故郷であるペラ州のチェモール及び近海に散骨された。マレーシア政府は、陳平を過去の人物として、特に問題視しないという声明を出している。

彼の波乱に満ちた生涯は、自伝『my side of history』（2003年）に詳しく記されている。この本を通じて、彼の視点から歴史を理解することができる。

脚注

陳平の生涯は、単なる共産主義者としての活動にとどまらず、複雑な歴史的背景と政治的思惑が絡み合ったものであった。彼の人生は、アジア現代史の重要な一側面を示しており、今後も様々な視点からの研究や議論が必要とされるだろう。

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