陳彦回

陳彦回（ちん げんかい）：波乱に満ちた生涯を送った明代の官僚

陳彦回は、明代初期に活躍した官僚であり、字を士淵と称しました。彼の生涯は、父の冤罪による流刑から始まり、数奇な運命をたどります。本貫は興化軍莆田県にありました。

家族と流刑

陳彦回は、帰安県丞を務めた陳立誠の子として生まれました。しかし、父が誣告により死罪となったことで、陳彦回は雲南へと流刑に処せられることになります。この流刑の道中で、多くの家族や従者が命を落とし、彼自身も祖母の郭氏とともに、辛うじて生き残るという過酷な状況でした。

復帰への道

一行が四川に辿り着いた時、生き残っていたのは陳彦回と祖母の郭氏のみでした。その後、大赦によって釈放されたものの、帰るための旅費すらありませんでした。そこで、彼は現地の知県である黄積良を頼り、黄姓を名乗ることを余儀なくされます。長い年月を経て、閬中教諭の厳徳政の推薦により、保寧府訓導に任じられ、官僚としての道を歩み始めました。

官僚としての活躍

1397年、任期を終えて都へ上京した陳彦回は、洪武帝に謁見し、平江知県に任命されました。翌年、洪武帝が崩御すると、彼は葬儀に参列するために都に赴き、その際に給事中の楊維康の推薦により、徽州府知府に抜擢されます。1399年には、その優れた行政手腕を建文帝から賞賛されるほどでした。

民衆からの信頼

陳彦回は、民衆から非常に信頼されていました。祖母の郭氏が亡くなった際には、官を辞そうとしましたが、徽州の民衆が南京の宮中に駆け込み、彼の留任を嘆願するほどでした。彼は、服喪のために痩せ細った体で宮中に赴き、自らの境遇を陳述し、復姓を願い出ました。建文帝は、かつて陳彦回が雲南に流された際、彼の弟である陳彦囦も遼東に流刑にされていたことを知り、その籍を除くことを命じました。

陳彦回は、服喪を全うすることを強く望みましたが、許可されませんでした。彼は、祖母を徽州城の北十里の北山南側に葬り、墓の前で悲嘆に暮れました。この山は、人々から「太守山」と呼ばれるようになりました。陳彦回は、「私は罪人であり、亡命して別の姓を名乗っていた。祖母が生きていたころは、罪を得るのを恐れて隠れ忍ぶこと二十年であった。今、祖母が亡くなったので、自ら死を請うべきである。陛下が私を特別に許されるのであるから、死をもって国に報いるだけだ」と涙ながらに語ったと伝えられています。

最期

1402年、燕王朱棣の軍が南京に迫ると、陳彦回は義勇兵を組織し、援軍に向かいました。しかし、捕らえられて南京に連行され、その生涯を閉じました。

陳彦回は、その波乱に満ちた人生の中で、逆境に負けず、民衆のために尽力しました。彼の生涯は、官僚としての忠誠心と民衆への深い愛情を示すものとして、後世に語り継がれています。

参考文献

* 『明史』巻142 列伝第30

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